華々しく見える宇宙飛行士。その裏側はいったいどうなっているのでしょうか。
給料
宇宙飛行士の年収は「約800万円」。
宇宙飛行士といってもJAXA(宇宙航空研究開発機構)の一職員であるため、給料の待遇もJAXA職員と変わらない。
ただし、宇宙へ行くことが決まってから地球へ帰還するまでは「給料は2倍!」になる。
必要なこと
・宇宙飛行士になるためには、「75m泳ぐ」ことができなければならない。
宇宙飛行士が地球に帰還する際、カザフスタンの平原に降り立つことになっている。
しかし、万が一海に落ちてしまった際、救出してもらうまで泳いでおく必要がある。(75mでは足りないような気がする)
・最も必要不可欠なのは、コミュニケーション能力。いろんな国々の宇宙飛行士の生活、文化も違う、だからその国々の人を理解する協調性が大事になる。
・宇宙で歯磨きをする際に気をつけなければならないのは、歯磨きのあとに口の中の溜まった水分などは飲み込むということ。
もし、口から外へ吐き出してしまうと、水分が壁や天井に付着し、重大な事故が怒ってしまう可能性がある。
面接試験での質問
「『宴会の幹事』をするのは好きですか?」という質問が面接試験で出たことがある。
これは全体のリーダーシップもありますし、いろんな人の意見をまとめる調整役。
どうやってあることを進行させるかというバランス感覚が必要となる。
応募資格
宇宙飛行士の選抜試験の実施は、最近30年で5回。
応募資格は、
・40歳以下
・身長158cm以上190cm以下
・英語検定準一級以上
選抜試験
国家的プロジェクトの宇宙飛行士はどうやって選ばれるのか?
宇宙飛行士選抜試験の合格率は0.3%(2008年度 受験者数963名 / 合格者3名) と超難関。
選抜試験は全部で4段階ある。
・書類審査
・第1次選抜筆記試験
例:「恒星の南中時刻は1日に何分早くなる?」「日本三景を選べ」「100までの整数のうち3でも5でも割り切れない整数は?」など。
書類選考&第一次試験を通過できるのは、応募者 約900名 のうち 約50名。
・第2次選抜試験(精密検査&面接)
【精密検査】
人間ドックをはるかにこえた医学検査。
「脳波検査」、「血液検査」、「24時間心電図」、など4日間、頭からつま先までくまなく調べられる。
宇宙ステーションには医者がいないので、病気にならないことが宇宙飛行士の必須条件。
「心電図の波形」や「肝機能」などに少しでも異常があると不合格となる。
精密過ぎるな検査のため、人間ドックでは見つからなかった疾患が見つかることもある。
【面接】
「なんか線細そうだけど大丈夫?」「宇宙でやっていけないんじゃないの?」。
このように、面接官は、動揺させるようわざと高圧的な質問をしてくることがある。どんな状況でも落ち着いた対処ができるかどうか細かくチェックしている。
「君の好きな近代文学作品を教えてくれますか?」
宇宙飛行士には自国の文化をアピールする役目もあるため、日本の歴史や文化に精通しておく必要がある。
そのため、面接官には現役宇宙飛行士だけではなく、劇作家や日本文化の研究者など、様々な分野の人が選ばれる。
第二次選抜試験を通過できるのは、約50名 のうち 約10名。
・閉鎖環境適応試験
選抜試験で最も過酷な「閉鎖環境適応試験」。
JAXAにある外界から閉ざされた密室で、24時間監視のもと、密室で1週間5人で過ごす。
この段階までくると、試験に全てをかけるため、今の仕事を辞める人も多い。
900人から選ばれた10人。自ずと一流企業のパイロットや、エンジニアや、医者など、エリートが残ってくる。
ここで試されるのは知識ではなく、極限状態の中でいかに周りとうまくやっていけるのかという、「協調性」や「リーダーシップ」などの「人間性」が試される。
それだけではなく、個人への課題では、ストレス耐性や根気強さが試される。
「144ピースの真っ白いジグソーパズル3時間で完成させよ」「1日で100羽の折り紙の鶴を折れ」など。
・最終面接
閉鎖環境試験を終えて、一ヶ月後、
ヒューストンにあるNASA(アメリカ航空宇宙局)で、現役の宇宙飛行士による最終面接が行われる。
約10名の中から宇宙飛行士が選ばれる。
「宇宙で何がしたい?」「宇宙開発は日本にとってどういう意味があると思う?」
面接官の質問はいたって普通、しかし彼らが見ているのはただ一つ、面接している相手が「好きか嫌いか」。
その話しぶり、雰囲気を細かくチェックし、同僚だったら楽しくやれるのかが判定基準となる。
宇宙飛行士の若田光一さんが国際宇宙ステーションの司令官になれたのも、フレンドリーで誰からも愛される性格だったからと言われている。
・合否の通知
NASAでの最終試験後は、現地のホテルに待機して、電話での合否連絡を待つ。
合格通知は先輩の日本人宇宙飛行士が伝えるのが恒例だという。
過酷な訓練
難関の宇宙飛行士選抜試験に合格して、ホッとするのも束の間。次に待ち受けているのは過酷な訓練。
極限状態で生き抜く力をつけるロシアの極寒地帯での2泊3日のサバイバルや、
無重力空間を想定した船外活動の訓練など、
一歩間違えれば命を落としかねない訓練をこなしていく。
すぐには宇宙に行けない?
宇宙飛行士になってもすぐに宇宙に行けるとは限らない。
合格してから宇宙に上がるまで5年以上かかることも少なくない。
毎年の誕生日には、精密検査の受験義務がある。
長期間、健康でいつづけることは過酷である。
ミッションが決定したら必ずすること
「ようやくミッションが決まった!」
搭乗が決まると、しなければならないのは「遺書を書く」こと。
これは宇宙飛行で命を落とす可能性があるため。
儀式
宇宙へ行く直前には、安全祈願のために行う儀式がある。
出発直前に乗るバスにオシッコをかける。女性の場合はその場でできないので、コップやペットボトルに入れてかけることがある。
国際宇宙ステーション
何よりも宇宙飛行士が感動するのは、地球を宇宙から見たその瞬間。フライトで何年も待たされたことなど一瞬にして忘れてしまうという。
国際宇宙ステーションとは、地上から約400km上空に建設された、有人施設で定員は6名、アメリカ・ロシア・日本をはじめ、世界15ヵ国が協力して宇宙環境を利用した研究や実験を行っている。
中は地上と同じ空気が保たれ、Tシャツ1枚で快適に過ごせるようになっている。
宇宙病
無重力の宇宙では、「宇宙病」と呼ばれる様々な不調が引き起こされる。
・ムーンフェイス・・・体液が上半身に移動して頭に血がさかのぼるので、頭痛や思考能力が低下することもある。
・宇宙酔い・・・平衡感覚が狂って酔ってしまうため、酔い止め薬が必須となる。
・背中が痛い・・・無重力では、背骨の間隔が伸びて身長が約5cm伸びる、そのせいか背中が痛くなってしまう。
・寝付けない・・・上下のない宇宙空間では、寝袋に入り固定して寝る背中の痛みや機械音でなかなか寝付けない。
・ご飯が食べられない・・・胃の中で食べた物がプカプカ浮いてしまうため、数日間は満腹状態が続いてしまう。
世界各国独特の匂い
国際宇宙ステーションの中には、世界各国の居住スペースや実験棟があり、それぞれ独特の匂いに満ちているという。
ロシア居住棟では、野菜の匂いがする。
→野菜を使った煮込み料理が多い(ボルシチ他)。
日本の実験室「きぼう」では、新車の匂いがする。
同じ匂いでも気をつけなければならないのは、「おなら」。
無重力の宇宙船内では空気の対流が起こらない、その結果おならは拡散せず、塊になってやってくるので、まともに食らうと地獄。
おならはトイレでというのが宇宙飛行士のマナーとなっている。
多忙なスケジュール
宇宙飛行士の1日のスケジュールを見てみると、
朝6時に起床、22時に就寝するまで、15分刻みで仕事がぎゅうぎゅう詰め。サラリーマンなので土日は休みということになってはいるが、
休日は、諸外国の人々や子どもたちに、宇宙生活を生中継するイベントが盛りだくさん。
このイベントで休日がつぶれてしまうことも多い。
宇宙実験
宇宙では地球の20倍のスピードで急激に老化するため、宇宙飛行士の体そのものが最先端医療の絶好のサンプルとなる。
宇宙飛行士は地上から常に監視され、採血や新薬を飲むなど、自らの体を使って実験を行う。
また、地球に還ってきてからも、毎年の誕生日には精密検査を受けることが義務付けられている。
お風呂に入れない!
国際宇宙ステーションには、お風呂はおろか、シャワーもない。
このため髪はドライシャンプーで洗って、顔や体の汚れは濡れタオルで拭いておしまい。
水は貴重
宇宙で水はとても貴重。地上からの運搬費を換算すると、コップ一杯で30万円。
そのため、国際宇宙ステーションでは、乗組員の尿をろ過して再利用し飲料水にしている。味にはちょっとしたクセがあるという。
ちなみに、大便はリサイクルできず、他のゴミと共に輸送機に乗せて排出、そのまま大気圏で燃やすことになっている。
あと、お酒は飲めない。さらにタバコもだめ。
宇宙ゴミ
地球の周りには使用済みの人工衛星など、約15000を超えるデブリ(宇宙ゴミ)が猛スピードで周回している。
数センチのデブリがぶつかるだけで、大事故を引き起こす。
地球への帰還
かつてはスペースシャトルでNASAの基地へ帰還していたため、大勢の人が待っていた。
しかし、スペースシャトルは安全性の問題で廃止。
現在はパラシュートでカザフスタンの大平原に降りるため、どこに到着するかはわからない。
誰かが助けに来るのを待つしかない。
選ばれたものだけがなれる職業、宇宙飛行士。その裏側は決して華々しいものではないようです。