0.6票差で大接戦の選挙があった!という話:日本人のおなまえっ!【2019/06/27】

0.6票差で大接戦の選挙がありました。

1票よりも少ない票差ですが、

いったいどういうことでしょうか?

実際にあった1973年の福井県の三方町議選の結果を抜粋したものがこちら。

なんと、当選した人の名前が「藤本 利雄」、落選した人の名前が「藤本 とし夫」だったのです。

さらにこの時、「藤本」と名字だけ書かれた票が多数ありました。

この時の票はどうなるのでしょうか?

実は、1票を分け合うことになります。

二人なので0.5票ずつ分けそうに思えますが、

こんなルールがあります。

例えば、漢字の藤本利雄さんが600票、ひらがなの藤本とし夫さんが400票だとします。

そこに、「藤本」という票があった場合、600対400、つまり6:4で分け合います。

なので、1票が0.6票と0.4票になるのです。

結果、藤本とし夫さんは0.649票差で落選。

これで話は終わりません。

あと1票あれば当選していた藤本とし夫さんは、無効になった票を再チェックしました。

その無効票から出てきたのが、「藤本よし夫」と書かれた票。

藤本とし夫さんの 「し夫」と「し夫」の1文字違い。

これは自分の票だと選挙管理委員会に訴えたところ、認められました。

藤本とし夫さんは当選、当選だったはずの沢村さんは落選となりました。

しかし、沢村さんも黙ってはいません。

逆転され不服の沢村さんは、「よし夫」票は無効だと主張し、高等裁判所に訴えを起こしました。

裁判長の判断は、

「よし夫」と書かれた票は、平均以上のキレイな文字で書かれている。よってそんな人が「とし夫」と「よし夫」を間違えない。藤本さんに加えた1票は無効票である。

としたのです。

その結果、沢村さんが再逆転で当選。

この結果に、もちろん不服の藤本とし夫さんは、さらに争うために上告。

最高裁判所の判決は、

逆転につぐ逆転で、藤本とし夫が当選が決定。

その理由は?

高等裁判所が下した文字のキレイ汚いは関係ない。単純に「と」・「よ」を書き間違えただけであり、「とし夫」と書こうと考えるのが自然である。

と、「よし夫」票は、藤本とし夫の1票となりました。

結果、藤本とし夫さんが当選、沢村さんが落選ということで、落ち着きました。

ただ、その次の町議会選挙では、藤本とし夫さんも、沢村さんもどちらもそろって当選したということです。

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