プラスチックごみの広がり方の話:ヘウレーカ!【2020/02/05】

海洋物理学者の磯辺篤彦 先生が プラスチックごみについて話をしていました。

海岸にある漂着ごみのほとんどはプラスチック。


街中で捨てられたごみが、川に入って大きな川に集まって、それから海に行って、最後にどうしても海岸に集まってくる。

海流の動き

どうやってごみが広がっていくのかを、「海流の動き」がわかる模型で見てみる。

水槽の中に海水を入れ、これを回転させる。

上部に取り付けられたカメラから見るとこんな感じ。

重い塩水の上に赤い色をつけた海流を流すと、

回転(地球の自転)の影響を受けて、右に見た方向にしか水は進むことができない。

海流を、岸に右手に見る方向に運ぶ力を「コリオリ力(りょく)」という。

コリオリ力とは、本来まっすぐ進んでいるはずの物体が、地球の自転の力を受けて右へ右へと移動しているように見える効果のこと。

1835年、フランスの科学者コリオリさんが見つけた物理法則。

この「コリオリ力」が世界中の海流に大きな影響を与えている。

実際には、風や気温などの影響も受けて、更に複雑で緻密な動きをしている。

まるで、「海の中の道」みたいにぐるぐると循環しているのがわかる。

こちらは、日本周辺の「海流」のシミュレーション。

色が赤くなればなるほど速い流れを示している。赤く映っているのは「黒潮」。

プラスチックごみは複雑な海流に乗って海全体に広がっていく。

この海流のシミュレーションを逆再生すると、

その中のいくつかのごみは、中国の揚子江の河口に吸い込まれていった。

これで、川からごみが来ているということがわかる。

国外から来ているとはいえ、他の国にごみを出さないでくださいとはいえない。

日本の場合、「海岸漂着物処理推進法」があり、海岸に漂着したごみは出所を問わず自治体で処理することになっている。

プラスチックごみは有害?

そもそも、プラスチックごみ自体は、ヒトが食べてもそのまま排出されるので、無害。

では、なぜ注目されているのか?

プラスチックごみが有害物質を吸着してしまうから。

直径5ミリメートル以下のプラスチックごみのことを「マイクロプラスチック」という。ビニール袋やペットボトルなどのプラスチックごみが紫外線や波の刺激を受けて細かく砕けたもの。

このマイクロプラスチックは、PCB(世界的に使用が禁止されている人口の化学物質)のような、残留性の有機汚染物質を集めてしまう働きがある。

例えるなら、磁石と砂鉄のような感じ。

プラスチックの原料は「石油」。海に漂う有害物質のほとんどは石油と同じ「油性」。

油は水に溶けずお互いくっつき合う性質を持っている。そのため、マイクロプラスチックは海に漂う「有害物質」をどんどん吸着してしまう。

それを魚やカメは食べてしまう。

これが問題となっている。

以下のグラフは、日本近海の100立方メートルあたりの海中で見つかったマイクロプラスチックの「個数」を「サイズ別」で示したもの。

小さくなればなるほど数が増え、割れればもっと細かくなって数が増えると予想されるが、実際は、黄色い部分ほどはなく、数が減っている。

プラスチックを分解するのに数百年か1000年ぐらいかかると言われているので、地球のどこかにあるのは間違いない。

海中に流れ込んだプラスチックごみの9割は行方不明になっているという、このミッシングプラスチックの問題がある。