扇風機に向かって、「アー」と言うと変な声に聞こえることがあります。
これはなぜでしょうか?
音響分析のスペシャリスト、日本音響研究所 所長の鈴木 創さんが説明していました。
扇風機に向かって声を発すると、自分が発している声に加え、扇風機の羽根に当たって返ってくる声もほぼ同時に聞こえている。
私たちの声は、肺から送られてくる空気で声帯を振動させ、空気の波を発生させて生まれている。
この空気の中に生まれた波を「音波」という。
私たちが声を出すと、この音波は同心円状に広がり、耳の鼓膜を揺らすため、人間は音を感知している。
この「音波」は、物に当たると、はね返ってくるという性質がある。実際に、顔の前に下敷きを持って、「アー」と声を出すと声が大きく聞こえる。
これが、この声がはね返っている証拠になる。
例えば、お風呂場のような狭い空間で声を出すと、よく響いて大きく聞こえる。
これは、近くにあるお風呂場の壁に声の音波がぶつかり、はね返って聞こえているため。
一方、広いグラウンドで声を出すと、近くにぶつかる場所がないため、声の音波は拡散してしまい、大きく聞こえない。
声を出す場所によって、聞こえ方が異なる。
では、なぜ扇風機に声を出すと変な声に聞こえるのか?
扇風機に向かって声を出すと、扇風機の羽根にぶつかって返ってくる声と、羽根と羽根の間を通り抜けていってしまう声、この2つに分かれるから。
実際に、壁に向かって声を出した時と、扇風機に向かって声を出した時を周波数分析し比較してみる。
こちらが周波数分析をした画像。
人の耳に聞こえやすいという2800〜3500Hzに注目。
壁に声を出した時は、声の成分は安定し変化はないが、
扇風機に向かって声を出した時を見てみると・・・、
こちらは、0.2秒分を切り出した画像。
この紫になってる所は、扇風機の羽根にぶつかって返ってきた音。で、ここ(緑の部分)が通り抜けていった音。
「大きい音を表す紫」と「小さい音を表す緑」が、交互になり2つに分かれている。
ある扇風機の場合、1秒間「アー」と言うと、約30回羽根に声が当たったり通り抜けたりを繰り返していた。(※扇風機によって異なる)
つまり、扇風機に向かって「アー」と声を出すと、「扇風機の羽根に当たって返ってくる大きい声」と、「羽根を通り抜けていく小さい声」が繰り返され、それが、ほぼ同時に聞こえるために変な声に聞こえてしまう。