「お経」って何?般若心経が人気!という話:チコちゃんに叱られる!【2020/12/04】

「お経って何?」 という話がありました。

これについて、詳しく教えてくれたのは、佐々木 閑 先生 (花園大学 文学部 仏教科 教授)。

私たちがお葬式などでよく耳にする「お経」。

実は、あれは亡くなった方のために読んでいるのではなく、周りで聞いてる人のために唱えているもの。

主に、お釈迦様が私たちの生き方について、与えて下さったアドバイスが書かれているもの。

そもそも、お経は、紀元前5世紀ごろのインドで、最初に誕生したといわれている。

そのお経のもとになる教えを説いたのは、ブッダとも呼ばれているお釈迦様。

お釈迦様は裕福な家庭の子どもだったが、生まれて1週間で母親が亡くなったこともあり、その後、どんな人にも必ず老いや病気や死が訪れるという世の中の現実を見て悩むようになった。

そして、29歳の時、家を出て精神修行を始めた。

お釈迦様は断食などの苦行や、あるいは深いめい想修行などを試し、とうとう35歳の時、菩提樹(ぼだいじゅ)という木の下に座って悟りを開いた。

代表的なものに、「三法印(さんぼういん)」というものがある。

これは、「諸行無常(しょぎょうむじょう)」「諸法無我(しょほうむが)」「涅槃寂静(ねはんじゃくじょう)」の3つの教えのこと。

【1】「諸行無常」この世のすべてのモノは変化し壊れていく
【2】「諸法無我」自分中心にモノを考えてはならない
【3】「涅槃寂静」自分勝手な思い込みをなくすことで、苦しみが消えて楽になれる

三法印とは、決して、私たちがこの世で安楽で、快適な豪華な生活ができるとは言っていない。

より良い生活を求めたがるが、「より良い」という気持ちを捨てるとすごく楽に生きられる、と言っている。

お釈迦様は、80歳で亡くなったが、生前に言い残した教えを弟子がまとめたものが「お経」。

つまり、お経は、お釈迦様が、悩み苦しむ人たちを救うために口にした教えを弟子たちが文字にして書き残したモノ。

それは、亡くなった人への言葉ではなく、生きている人たちが苦しみから逃れて、楽に生きていくためのアドバイス。

仏教は生まれてから約2500年経つ。

後の弟子たちが時代や社会のニーズに合わせて、書き換えたり、違う解釈を加えてさまざまなお経が作られた。

どのお経をよりどころにするかで、いろんなグループに分かれた。

それが、今、日本でいうところの、例えば、浄土宗・日蓮宗・真言宗など 仏教の宗派に分かれていった。

日本に数ある宗派は、信仰するお経や解釈の違いで生まれた。

中でも人気のあるお経として、「般若心経(はんにゃしんぎょう)」がある。

多くの人が唱えたり、写経をして書いたりして、一番人気のお経。

般若心経は、「大般若経」という600巻に及ぶ経典の大事な所を抜き取って、1巻262文字に要約したお経。(※宗派によって文字の数え方は異なる。)

どんな教えを説いているのか?

【仏説】摩訶般若波羅蜜多心経

「仏になるための最高の智慧(ちえ)について説明するお経」

観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時

「観音様は智慧を身につけるためにすごい修行をしました。 そして、私たちを形づくるすべての要素が、」

照見五蘊皆空 度一切苦厄

「実は実体のない、仮のものだと見抜いたのです。 それによってすべての苦しみを消すことができました。」

舎利子 色不異空 空不異色

「物質は実体のないものです。実体がないものが物質です。」

色即是空 空即是色 受想行識 亦復如是

「さらに、さまざまな心の働きもすべて、実体のないものです。」

舎利子 是諸法空相

「この世のすべてのものは実体がないのですから、」

不生不滅 不垢不浄 不増不減

「生まれたり消えたり、汚れたりきれいになったり、増えたり減ったりすることもありません。」

是故空中 無色 無受想行識 無眼耳鼻舌身意 無色声香味触法 無眼界 乃至無意識界

「つまり実体がないという状態は、物質や感覚などの認識がないこと。目・耳・鼻などや、色・音・香・味など、私たちが認識している世界はすべて空であり実体がない。」

無無明 亦無無明尽 乃至無老死 亦無老死尽 無苦集滅道

「さらに、愚かさもなく、その愚かさがなくなることもない。老いも死もなく、老いと死がなくなることもない。苦しみにも、その原因にも、原因を消すための方法にも実体がない。」

無智亦無得 以無所得故 菩提薩埵 依般若波羅蜜多故 心無罣礙

「悟りの智慧にも、悟りにも実体がない。それゆえ、最高の智慧を完成させてブッダを目指す者は、心に何の妨げもない。」

無罣礙故 無有恐怖 遠離一切顛到夢想 究境涅槃

「何の妨げもないので、恐れがなく、誤った考えから遠く離れており、ねはんに入れるのである。」

三世諸仏 依般若波羅蜜多故 得阿耨多羅三藐三菩提

「過去・現在・未来において、悟りを開いた者は、智慧を完成させたことによって、本当の悟りを得るのである。」

故知般若波羅蜜多 是大神呪 是大明呪 是無上呪 是無等等呪 能除一切苦 真実不虚

「この教えを、誰でも覚えられる短いフレーズにしたものがある。それは絶対間違いのない、この世で最高の言葉である。」

故説般若波羅蜜多呪 即説呪曰

「それを唱えるとすべての苦しみが消える。」

(最後は、お釈迦様の激励の言葉で締めくくられている。)

羯諦 羯諦 波羅羯諦

「おお、悟りの世界に行った者たちよ。」

波羅僧羯諦 菩提薩婆訶 般若心経

「君たちの悟りの境地に幸あれ」

つまり、般若心経というのは、

実体のない「空」という考え方を教えてくれている。
思い悩むことがあっても、何事にも執着せず、とらわれずに生きていこう。

という人生のアドバイスだった。

ちなみに、仏壇を向いてお経をあげる理由は、念仏やお題目など、仏様に向けて唱える言葉もあるため。