火星人がタコなのはなぜ?という話:チコちゃんに叱られる!【2021/02/05】

火星人がタコなのはなぜ?という話がありました。

これを 英米文学に詳しい 巽孝之 先生 (慶應義塾大学 文学部 教授) が説明していました。

昔から火星は人類にとって親しみがわく惑星だった。

全てのキッカケとなったのが、イタリア人の天文学者、ジョバンニ・スキャパレッリ。

1877年、彼が、望遠鏡で火星の表面に細い模様がたくさんあるのを発見。

彼はこの模様をイタリア語で「」を意味する「Canali(カナーリ)」と名付け、論文を発表する。

しかし、この溝(Canali)を誤訳してしまった翻訳者が現れた。

フランスの天文学者で翻訳者でもある カミーユ・フラマリオンは、単に「溝」を「Canali」を人の手によって人工的に造られる「運河」を意味する「Canal」と訳してしまった。

つまり、火星に人工的に造られた運河があるということは、火星人がいるということになってしまった。

誤訳された論文はアメリカ大陸へ渡る。

その論文を読んだのが、資産家でもあった アメリカ人の天文学者、パーシヴァル・ローウェル

彼の豊かすぎる想像力が、火星人をタコへと近づけていった。

火星の溝を運河だと信じてしまったローウェルは、

1894年、私財をなげうってアメリカアリゾナ州に火星の運河を観測するため、天文台を作った。

ローウェルは、約20年にわたり火星を観測し、その溝を運河と信じ込んでスケッチする。

望遠鏡の写真では不鮮明な溝が、ローウェルのスケッチでは、はっきりとした運河として描かれている。

彼の信じたい気持ちはエスカレートし、ついには運河に名前をつける。

地球から見えるほどの巨大な運河を造れるのだから、

「火星人は肉体の限界を超えるほどの頭脳を持つはずだ」「そして人間とは違いかなりグロテスクであろう」

と記している。

そのローウェルが書いた火星の本を読んだのが、イギリスのSF作家 H.G.ウエルズ。

1898年、彼はローウェルの本をヒントに後に大ヒットとなるSF小説「宇宙戦争(1898)」を出版した。

その時、「火星人はこうです」と思い込ませるようなイラストを描いていた。

この小説は、意外な方法で全米に広まる。

それが「ドッキリ」だった。

1938年10月30日、ハロウィーンの前夜。

アメリカで小説「宇宙戦争」がラジオ番組として放送される。

音楽が放送される中、突然、緊急のニュース速報が飛び込む。

「音楽の途中ですが、ここで臨時ニュースをお伝えします。午後8時50分 正体不明の巨大な光る物体がニュージャージー州の農場に落下しました。怪物がはい出てきました!どんどん出てきます!タコのような姿です!人々が襲われて燃えている!こちらにやってくるぞ!」

これを聞いていた人々は、本当に火星人が攻めてきたと信じ込み、大パニックになった。

ニュースを信じ込んだ人は、全米でなんと約100万人。

避難しようと家を飛び出した人々の車が大渋滞となったり、給水塔を火星人のロボットだと思って発砲した人もいたという。

全米を揺るがすほどの大事件だった。

SF小説「宇宙戦争」は 日本にも輸入され、昭和に入って少年雑誌「少年少女譚海」などに、火星人が襲来するSF小説が多数連載される。

子供たちは、タコの姿をした火星人に心を奪われた。

その後、手塚治虫のマンガ「火星物語」に描かれた火星人の姿もタコのようだった。

こうして、日本人にも火星人イコール「タコ」のイメージとなった。