なぜ笑うと「えくぼ」ができる?という話がありました。
これを 顔の筋肉や構造に詳しい 青木律 先生 (日本医科大学 形成外科 非常勤講師)が説明していました。
えくぼは、笑った時に、頬などにできる顔のくぼみのこと。
これには、顔を動かす表情筋が関係している。
表情筋とは、顔の表情をつるく筋肉のこと。
骨にくっついている腕や足の筋肉と違い、
表情筋は皮膚にくっついていることから、複雑で細かな表情を作り出すことができる。
どのようにして、人類がえくぼを得たのか、それは生物の進化の長い歴史を見るとわかる。
我々人類の祖先をたどると、地球で初めて背骨を持った生物「魚類」に行き着くをいわれている。
原始的な魚類は、サメのように口から入った水を流しだす「エラ孔(あな)」が存在していたと考えられている。
このエラ孔を動かすための筋肉が、やがて顔の表情筋へと進化していく。
まず、魚類のエラ孔を動かす筋肉は、は虫類の首まわりの筋肉へと進化。
やがて哺乳類が誕生すると、哺乳類はおっぱいを吸う必要が出てきた。
口をすぼめるような、口のまわりの筋肉を発達させる必要が出てきた。
は虫類の首まわりの筋肉は、哺乳類になるとおっぱいを吸うための頬や口まわりの筋肉、目を開け閉めする筋肉などに進化。
哺乳類になって初めて、皮膚にくっついた表情筋が生まれた。
そして、人類の祖先であるサルになると、顔の毛が少し退化して抜けてきて、表情が表れるようになる。
相手に、敵意がない服従をするというサインを示す時に、唇を開けて相手に表情を使って伝えることが、できるようになった。
これが笑いの原形といわれている。
サルの表情筋を見てみると、口まわりや口角を引き上げる筋肉が、他の哺乳類よりも更に発達しているのが分かる。
しかし、サルにはまだ「えくぼ」はない。
そして、サルからヒトへと進化すると、表情筋も更に発達する。
ヒトの目のまわりや、口のまわりにたくさん複雑な筋肉がついている。
ヒトの笑顔をつくる表情筋は、口まわりや口角を引き上げる筋肉の他、笑う筋肉と書く笑筋など、複雑に細分化した。
脳の発達により、感情に伴った さまざまな表情をするようになったことで、顔の表情筋はサルよりも細かく薄く進化したと考えられている。
こうして、魚類のエラ孔を動かす筋肉から進化を遂げ、人類は笑顔を作り出す顔の表情筋を得た。
しかし、えくぼを作りだすのは、この表情筋だけではない。
人間の顔には「じん帯」があり、これがえくぼに関係している。
こちらの人の顔に描かれた青い線の部分が「じん帯」。
顔のじん帯は骨と皮膚、そして筋肉ともつながっていて、筋肉がずり落ちないようにとめる役割をしている。
人によっては、このじん帯の部分で皮膚が奥の方とくっついていると、この皮膚が奥の方に引き込まれる。
笑うと口角を引き上げる筋肉が縮む。すると、縮んだ筋肉にくっついているじん帯が引っ張られ、じん帯とつながっている皮膚の部分に凹みができる。これが「えくぼ」。
えくぼの有無は、じん帯と皮膚との結び付きが強いか弱いか。
じん帯の結びつ付きが強い人ほど、くっきりとしたえくぼになる。
えくぼの種類もいろいろある。
・縦えくぼ (頬のじん帯が縦に強く結び付いている)
・口角えくぼ (口角付近のじん帯が強く結び付いている)
・泣きえくぼ (頬の上のじん帯が横に強く結び付いている)
人類は笑顔を見せ合うことで、争いや戦争を回避してきた。
えくぼは、その笑顔をより強調するもの。