「アカペラ」ってどういう意味?:チコちゃんに叱られる!【2021/09/11】

歌を歌う時などに使う「アカペラ」ってどういう意味なのか?という話がありました。

これについて、国際基督教大学で宗教音楽を研究している 佐藤望 教授 が説明していました。

ア・カペラ(a cappella)」というイタリア語から来ている。

もともとは、「教会で」という意味。

アカペラは、教会で歌う聖歌と深い関係がある。

キリスト教の伝統的な聖歌に、「グレゴリオ聖歌」がある。

その歌は、基本的に、伴奏はなく、メロディーが1つだけの とてもシンプルなもの。

今みたいな楽譜はなかったので、歌は実際に歌って伝えるしか方法がなく、シンプルな楽曲がほとんどだった。

しかし、14世紀に入り、現在のような五線譜の楽譜が普及し始めると、作曲家たちは、複雑な聖歌を次々と作り始める。

1つのメロディーだった聖歌は、2つ以上のパートに分かれ、1つのハーモニーを作る合唱へと進化する。

このような音楽を「複数」を意味する「ポリ」と、「響き」を表す「フォニー」で、「ポリフォニー」と言い、この時代に大流行した。

14世紀以降、作曲家たちは、競うようにポリフォニー音楽を作ったため、聖歌はたくさんのパートに分けられた複雑なハーモニーへと変化し、ついには、イギリスのトマス・タリスという作曲家が作った「我、汝の他に望みなし」という歌は、40パートものパートがそれぞれ違うメロディーを歌っている。ここまでくると、もう何を歌っているかわからないという。

作曲家たちの腕自慢は、さらにエスカレートし、聖歌に楽器の伴奏を積極的に取り入れ始め、かつてのシンプルなものとはかけ離れてしまった。

しかし、16世紀になると、ドイツのマルティン・ルターらによる宗教改革により、聖歌は大きな転機を迎える。

後のプロテスタントと呼ばれる人たちの運動が始まり、キリスト教は大混乱に。

その混乱を収束させるために、ローマ教皇は「トリエント公会議」を開く。

聖歌というのは、もともとお祈りのための音楽のはずだが、歌詞がわからなければ音楽にならないのではないか?など、避難の声があがり、聖歌は、楽器を使わずシンプルに歌わなければならない など、話し合われた。

トリエント公会議の流れを忠実に実行したのが、「教会音楽の父」と呼ばれる作曲家、パレストリーナ。

彼が作る曲は、歌詞が聞き取りやすいシンプルで美しいハーモニーで、今で言うアカペラの原点となった。

しかし、トリエント公会議を開いたローマ教皇への対抗心が強かったベネチアなどでは、聖歌はシンプルにというお達しを無視して、楽器を積極的に取り入れた聖歌が作られ続けた。

これに対し、19世紀になるとドイツで、トリエント公会議に立ち戻り、楽器による伴奏を排除しようとする「セシリア運動」が起こる。

そこで、再び脚光を浴びたのが、作曲家のパレストリーナ。

彼の曲は、無伴奏だったので、

「ア・カペラ(教会)の音楽」イコール、「無伴奏」という意味が広がっていった。

ヨーロッパから世界へと広まり、20世紀に入ると、アメリカで神に祈り合唱する「ゴスペル」が誕生。

楽器を持たない、声だけのパフォーマンスが、ストリートで大流行。

こうして、アカペラは、一つの音楽ジャンルとして定着した。