「アンティーク」と「ヴィンテージ」の違いはなに?という話がありました。
これについて、西洋アンティーク研究科の第一人者 岩崎紘昌 さん が説明していました。
まず、「アンティーク」というのは、「100年以上昔のモノ」を意味する言葉。
その考え方のキッカケとなったのが、アメリカのある法律。
その法律とは、1930年に定められたアメリカの関税法。
当時の関税法の条文には、「1830年より昔に作られたモノ」とある。
つまり、法律ができた年から、100年以上前のモノには、関税がかからないと記されている。
1830年というと、1700年代にイギリスで起きた産業革命が各国にひろがっていった時期。
産業革命以前は、主に手作業で作られていた家具や食器なども、このころからは機械を使って大量生産が徐々にできるようになった。
そのため、当時のアメリカの人々は、1830年より昔のモノを歴史的に貴重なモノと考えて、それらの商品を輸入しやすいように、関税をかけないようにしたのではないかと、思われる。
そして、1966年、関税がかからないのは「100年以上前に作られたモノ」という書き方に法律が変化。
このことから、業界では基本的に「アンティーク」は、「100年以上昔のモノ」を意味する言葉として使われている。
関税法の改正により、1831年以降に作られたモノでも、100年以上前のモノであれば、「アンティーク」と呼ばれるようになった。
一方、ヴィンテージは、アンティークに比べて定義があいまい。
実は、「ヴィンテージ」とは、もともと「ブドウの収穫年」を意味するワイン業界の専門用語。
つまり、「ヴィンテージ」という言葉には、もともと「古い」という意味はなかった。
しかし、日本では、「ヴィンテージワイン」を「長期熟成された すばらしいワイン」という意味で使う人もいる。
このことから、「ヴィンテージ」にも「年月を重ねて価値を増した古いモノ」という意味が生まれたと考えられる。
しかし、「アンティーク」という言葉がありながら、なぜ、近い意味を持つ「ヴィンテージ」という言葉が必要だったのか?
キッカケになったのは、第二次世界大戦。
戦争によって100年以上昔の「アンティーク」と呼べるモノの多くが失われてしまった。
それにより、業界では、作られてから100年も経っていない「アンティーク」とは呼べないが、それなりに古くて価値のあるモノに「ヴィンテージ」という別の呼び方を与えた。
ところが、「ヴィンテージ」という言葉がどれくらい前のモノを指すかは、業界によってさまざま。
例えば、ジーンズ業界の場合、ジーンズを染める染料が変化した1978年ごろより古い時代に作られたモノをヴィンテージジーンズと呼んでいる。
ヴィンテージジーンズは、インディゴ染料というもので染められ、現在のジーンズには硫化染料というものが使われている。
色落ちしていない状態だと、あまり違いは分からないが、それぞれが色落ちすると、
ヴィンテージは、縦方向に色落ちしていくという特徴がある。
これにより、見た目にも縦じまが入っているように見える1978年以前のモノをジーンズ業界では「ヴィンテージ」と呼ぶという。
しかし、一般的には、ヴィンテージは「戦後以降に作られた古くて価値のあるモノ」という考え方が主流になっている。
作られた年代の古さ以外にも、希少性やモノの価値もヴィンテージかどうかを決める上で、重要な要素と考えられる。
ちなみに、今回説明された「アンティーク」と「ヴィンテージ」の定義は、日本の法律などで決められているわけではなく、アンティーク業界で主流となっている考え方の1つで、販売されている商品すべてに定義が当てはまっているわけではない。