スペードのエースだけ大きくて派手なのはなぜ?:チコちゃんに叱られる!【2021/10/29】

トランプで、スペードのエースだけ、大きくて派手なのはなぜ?という話がありました。


これについて、高橋浩徳 先生(大阪商業大学 アミューズメント産業研究所)が説明していました。

スペードのエースが大きく派手になったキッカケは、18世紀のイギリスのトランプ。

この頃のイギリスは、度重なるフランスとの戦争で、お金に困っていた。

そこで、新たな税金を考え出す。それが「トランプ税」。

18世紀のイギリス国内は、トランプを使った違法なギャンブルが流行、トランプが飛ぶように売れていた。

そこで国は、トランプに高い税金をかければ、お金は入るし、違法なギャンブルも減るだろうと考えた。

税金を納めるのは、トランプを販売しているメーカー。

キチンと税金を納めた証明として、1セットあたり1枚のカードにスタンプが押された。

それが、スペードのエースだった。

トランプを作る時、1枚の大きな台紙に、全てのカードを印刷する。

この時、スペードが上の段に印刷されることが多く、裁断して揃えると、スペードのエースが一番上になりやすかった。

この頃のスペードのエースのマークは、まだ他のマークと同じ大きさ。

余白の部分に、税金を納めた証拠のスタンプが押された。

この時、かけられた税金があまりにも高かったため、脱税を企てるトランプメーカーと、税金を納めてもらいたい役所との間で、イタチゴッコが始まった。

1711年に始まったトランプ税は、当初6ペンス。

1801年には、2シリング6ペンスまで、増税された。

これは、あえて分かりやすく現在の円の価値に換算して、仮にトランプの原価を200円とすると、約400円の税金が860円に跳ね上がったようなもの。

これでは、商売あがったりと、トランプメーカーは、税金を納めていないのに、納めたようにみえるスタンプを偽造。

税金を納めていない違法なトランプが、世の中に出回る。

最初のスタンプは、デザインが単純で、すぐにマネされていた。

そこで、模様などを複雑にして、マネされにくい柄へと変わっていった。

しかし、新しいスタンプを作っても結局マネされる イタチゴッコが繰り返される。

その中で、模様は、どんどん複雑になり、現在のスペードのエースの元となる マークを囲うスタンプも登場するが、これも偽造されてしまう。

こうして、1765年スタンプの代わりに生まれたのが、納税した証しとして、後からスタンプを押すのではなく、既に印刷されたスペードのエースカードそのものが、税金を納めた証明になった。

しかも、そのデザインは、簡単にマネできない複雑なデザイン。

すると、トランプメーカーは、納税の証しであるカードそのものを偽造。

結局、トランプを作る側と役人とのイタチゴッコは続くことになる。

さらに、これだけではなく、役人は税金を安くする策を打ち出した。

1800年代前半のイギリスは経済が好調。

トランプからわざわざ高い税金を取って偽造が横行するよりは、税金を安くして偽造をなくし、確実に納税してもらう方が効率が良かった。

そして、1862年になると、税額はさらに引き下げられ、販売会社がスペードのエースを自由に印刷できるようになった。

この時から、スペードのエースのデザインは、メーカーの顔として、オリジナリティーに富んだカードへと、変わっていった。

その後、1960年、イギリスでトランプ税は廃止。

スペードのエースは、大きく派手なまま残り続ける。

ちなみに、日本でもトランプ税があった。

1989年の消費税導入前までは、トランプ・花札・麻雀牌に課される「トランプ類税」という間接税があった。

税額は、1962年以降は、トランプ1組あたり40円。

納税の証明として、「トランプ類税証紙」が貼られていた。