ストラディバリウスが高いのはなぜ?という話がありました。
これについて、バイオリン職人の 堀酉基さんが説明していました。
億単位の価値を持つ楽器「ストラディバリウス」。
そもそも、ストラディバリウスというのは、
今から約300年前に活躍した イタリアの天才楽器職人 アントニオ・ストラディヴァリが作製した楽器を意味する。
現在のバイオリンのスタイルを確立したとされる彼は、生涯で1000以上のバイオリンを作ったとされ、
そのうち、今も残っているのは、半分の500ほど。
つまり、ストラディバリウスというのは、その全てが約300年前に作られ、戦争や災害などの危機を乗り越え、現在まで受け継がれてきた、歴史的に、とても貴重な楽器。
しかし、ストラディバリウスが高い理由は、単に古くて貴重というだけでなく、
300年前に作られたこの楽器が、今なお超えられないバイオリンの最高傑作であるということ。
では、ストラディバリウスがどれほど優れているのか?
プロのバイオリニストによると、
・今でもまだ、弾き方によって新しい音色の発見があり、可能性を感じる。
・楽器の音以上の、生き物の声が聞こえてくるような感じがする。
など、彼らをとりこにするほどの魅力があるという。
数に限りのある昔の楽器が、性能的にも優れているため、結果的に価値が増し、高価になっている。
では、これ以上のバイオリンを作ればいいのではないか?
実は、これができない。
プロのバイオリン職人でも、300年前に作られたストラディバリウスの再現ができない。
アントニオ・ストラディヴァリは、詳細な製法を残していない。
現代の職人は、残された楽器を調査し、その材料や作り方を研究しているが、はっきりとした正解がいまだに出ていない。
しかし、世界の研究者たちが、いくつかの特徴的な製法を見つけ出してはいる。
木材
1つ目の特徴は、素材に使われている「木材」。
通常、木の成長は、冬に比べ夏の方が速く、その違いは年輪に現れる。
「冬目」と呼ばれる色の濃い部分は、木の密度が高く、「夏目」と呼ばれる白い部分は、密度が低い。
そして、この冬目が細く、その間隔が一定だと、バイオリンの音色は均一で高品質になる。
ストラディバリウスの木目を見てみると、
通常の木材に比べ、色の濃い目の幅が狭く、全体の間隔も均一。
ストラディバリウスが作られたのは、「小氷河期」と呼ばれる寒い時代だった。
小氷河期とは、14世紀から続いた、地球の寒冷期。
この期間は、現代と異なり、夏に気温が上がりすぎず、夏と冬の気温の差が少なかった。
そのため、季節による成長速度の差が少なく、木材の密度にも差が生まれにくかった。
これによって、密度が一定で軽くバイオリンに非常に適した木が、この時代には多く育っていたと考えられる。
この時代の木と全く同じ木を現代で手に入れるのは不可能だという。
厚み
2つ目の特徴は、「板の厚み」。
ストラディバリウスの表板は、現代で推奨されている3mmという厚みより、かなり薄くて、2mmの厚みしかないものが多い。
この薄さでは、確かに振動はしやすくなり、音色はよくなるが、弦の張力に負けて、木材が変形してしまうことがある。
つまり、音色を優先し、バイオリンの表板を薄くしすぎてしまうと、弦が引っ張る力に負けて、板が変形したり、最悪の場合、壊れてしまうリスクがあるということ。
そのため、現代の職人も簡単にはマネできない驚異的な技術。
このように、独自の特徴を持つストラディバリウス。
その品質に追いつけるよう、多くの職人が日夜研究を重ねている。