声もフォントのように「CoeFont」の話:よんチャンTV【2022/03/15】

20歳の起業家が、素晴らしいものを開発していました。

東京工業大学2年の早川尚吾さんが開発したのは「声フォント(CoeFont)」というサービス。

700ある文章を約2時間かけて録音。

それをAIが学習し、録音していない言葉も再現してくれるというもの。

早川さんによると、一番の魅力は「価格」だという。

早川さん「(CoeFontは)1500円でできたと思うんですけど、他の企業とかだと100万円とかになる。そうだと気軽に作れない。それはフォントみたいなものではないなと思って。」

字体に種類があるように、声も選んで変えたいという発想から価格を抑え、手軽な品質なら500円で録音時間は15分。最高品質でも1500円。

サイトには、著名人を含む5000種類以上のAI音声が公開されていて、利用料を払えば誰でも使うことができる。

・どんな人がどんな用途で使うのか?

早川さん「すごく収録時間のかかるオーディオブックみたいなもの、本の読み上げですよね。ユーザーが聴きたい声で好きな本を聴くことができる。いままではコストや時間の問題でできなかった。田原総一朗さんは声が出なくなっても『朝まで生テレビ!』を続行するためとおっしゃっていました。」

・AIは、人の声をどう学ぶのか?

早川さん「なるべく、ふだん言わないような言葉を入れておいた方が、そういう言葉を学習して言えるようになったり、例えば『げぇ』とか、あまり言わない、日常会話において、そういうものをAIに勉強させないと、あまりうまく発声できない。

この人格と個性を持った自分だけのAI音声で、笑顔を取り戻した人がいた。

都内に住む女性、酒井さん。

酒井さん「絶望的じゃないですか、声が出なくなるって。その孤独を考えたら本当に・・・」

酒井さんは、この2週間後、がんの手術で声帯を摘出し声を失うことになる。

酒井さんは声を失う前に「CoeFont」で自分のAI音声を作成。

退院後、声を失った酒井さんは、スマホでCoeFontを使って夫と会話をしていた。

酒井さんのAI音声「(ペットの)猫ちゃんの次の病院はいつだったかしら」

夫「いつだったかな、この前、薬を20日分もらったから」

酒井さんのAI音声「薬がなくなるから、忘れずに行かないとね」

夫「あぁそうやね、それは気をつけんとあかんね」


酒井さんのAI音声「がんで声を失うとわかった時、本当に絶望の淵に追いやられました。実際に声を失っても会話ができているので本当に救われました」

CoeFontを開発した早川さんも全く想像していなかった使われ方でした。

早川さん「これ、めちゃくちゃうれしいですね、こういう使われ方がされるとは思っていなかったけど、いやー、ちょっと開発頑張ります」

これを受け、CoeFontは、声帯摘出手術を受ける患者らに無償提供、半年で約200人の利用や問い合わせがあった。

今月(2022年3月)、新たにALS患者にも無償提供を決めている。

早川さん「CoeFontがあれば、今までと同じ声で自分も家族も変わらない日常が過ごせる。ALSの人も声帯摘出者の人も暮らせるような社会をやっていきたい」

他にも、いろいろな使いみちがある。

・オーディオブック
・店頭アナウンス
・恋愛ゲーム
・病気などで声を失う前に残す
・子どもの小さい頃の声を残す
→子どもが20歳をこえても小さい頃の声で「お父さんお誕生日おめでとう」などと言ってもらえる。

ちなみに、早川さんによると、

CoeFontでは、人を傷つける言葉や、社会概念から逸脱するような言葉は、そもそも音声化しないようにシステムが作られている。万が一、流れたとしても、これはAIが言いましたよという証拠がデータ上に残るシステムになっている。
悪用はできないセキュリティがはたらいている。

とのことだった。