大きな数字を書くとき、なぜ3桁ごとにコンマを入れるのか?という話がありました。
これについて、会計の歴史について研究をしている 友岡賛 先生(慶應義塾大学 商学部 教授)が説明していました。
富士山の高さは、3,776m。
日本の人口は、約1億2,512万人。
数字を見てみると、3桁ごとにコンマが入っているが、
実は、これは国のルールで決められている。
1952年、内閣官房長官が仕事の効率化を図るため、各省庁に書類の書き方を統一するように通知。
【大きな数は、「5,000」「62,250円」のように三けたごとにコンマでくぎる】と定めた。
これによって、数字を3桁ごとに区切るという表記が、全国に浸透していったと考えられる。
しかし、「一 十 百 千」が4桁ごとに繰り返され、その後ろに「万」と「億」と、新しい位がつくため、コンマの位置は3桁よりも4桁の方が分かりやすいような気がする。
3桁ごとの区切りは、英語の区切りがモデル。
英語では、「一 十 百」が「ワン テン ワンハンドレッド」で、この3桁の表現が 一つの区切り。
コンマが初めて出る「千」は、「ワンサウザンド」。
ここから「一万 十万」までの3桁は、「ワン テン ワンハンドレッド」が「サウザンド」の前で繰り返される。
2つ目のコンマが出る「百万」から3桁は、「ワン テン ワンハンドレッド」の後ろに、「ミリオン」が付き、
英語では、3桁ごとに、位の名前が変わるのが分かる。
でも、日本語だと4桁の方がわかりやすい気がするが・・・。
それは、福沢諭吉がアメリカの簿記の本を翻訳して、日本に紹介したのがキッカケ。
簿記とは?
家計や会社の財産・ビジネスに関する日々の取引の記録。
明治の初め、この西洋式の簿記に目をつけたのが、「学問のすすめ」や慶應義塾大学の創立者として有名な、福沢諭吉。
昔の数字の書き方は、面倒くさくて、見にくい。
江戸時代の帳簿に書かれた数字を見てみると、
例えば「420」の書き方は、「四百弐拾」のように数字の漢字と位の漢字で表現されていた。
いちいち書くのは面倒くさい。
それに、例えば、こちら。
パッと見てどっちが計算しやすいか?
これは、圧倒的にアラビア数字の方。
日本語は、パッと見、理解できない。
そこで、書くのが簡単で見やすい西洋の簿記に、目をつけたのが福沢諭吉。
この福沢諭吉が、アメリカの会計本を翻訳したときに、3桁ごとに点を打つと紹介。
日本では、3桁ごとのコンマを打つことになった。
アメリカの3桁のまま訳したのは、
「普通に翻訳した、でもそれが見やすかった」くらいのことだと思われる。
実際に、福沢諭吉が翻訳したのが、こちらの帳合之法(ちょうあいのほう)。
その中で、福沢は、
「多くの数字の重なるときは3字ごとに『、』の点を打て 百と千と十万と百万の位に分かつ」
と、「3桁ごとにコンマで数字を区切れ」と書いている。
さらに、
「金の高を書くに何千何百何十と記さず 一より九までの数字を用い その数字の位を見て金高を知る」
と、紹介している。
つまり、江戸時代の帳簿の書き方でいうと、「四百弐拾」の「百」と「拾」の漢字を省き、「四二0」と書けと言っている。
こうして、江戸時代はただ帳簿に書きなぐっていた数字が、福沢諭吉のおかげで位がそろえられ、
数字の大きさがひと目で分かり、足し算も楽にできる帳簿になった。
西洋式の簿記自体は、なかなか広まらなかったが、この数字の書き方だけは、とても便利で、すぐに浸透していった。
この時に一緒に、数字を3桁ごとに区切る方式も広まった。
ちなみに、4桁ごとに数の数え方が変わるのは、日本の他には中国、韓国、モンゴルの一部くらいで、
世界では、3桁ごとに数え方が変わるのがスタンダード。
ただそのまま翻訳しただけだったが、結果として福沢は、世界基準の数字の表現を残したことになる。
しかし、実は今、世界基準は、コンマがない。
コンマ・ドット問題がある。
実は、3桁ごとの区切りと、小数点の点を「どちらをコンマで、どちらをドットにするか」という問題で、世界が二分。
日本、アメリカなどは、3桁ごとにコンマを使い、小数点はドット。
しかし、ドイツ、イタリア、フランスなどは、逆に3桁ごとにドットを使い、小数点をコンマにしている。
3桁目のコンマは見やすさのためなので、別に間違っても大丈夫だが、小数点の位置は間違うと大変。
そこで、国際基準では「桁数の多い数字は読みやすくするために、3桁ごとに空白を空けてもいいけども、コンマは挿入しない」となっている。
つまり国際基準では、このように表記。
小数点の位置は、コンマかドットで表現する。
ちなみに、1万円札にコンマがない理由は、
コンマとドットを混同して間違わないようにどちらも使用していないから。