なぜニンニクはスタミナのもとなのか?という話がありました。
これについて、日本のニンニク研究の第一人者である有賀豊彦 先生(日本大学 名誉教授)が説明していました。
そもそも、ニンニクは弱った体を強くする働きがあり、数千年にわたって人間の生活を支えている人類にとって非常に重要な食べ物。
古くは、古代エジプトでピラミッドを建築する際、その労働者たちがニンニクを食べていたとされ、ピラミッドからはニンニクが描かれた壁画や、ニンニクの模型なども出土している。
この当時から、力仕事を行う労働者たちのスタミナの源として、ニンニクは重宝されていたが、
実は、ニンニクを食べるのは人間だけ。
その重要な鍵になるのが、ニンニクの持つ「硫黄成分」。
硫黄とは、多くの温泉に含まれ、その独特なニオイのもとになっている成分。
ニンニクは、地中からこの硫黄成分を吸収し、ため込む性質を持っている。
通常、ニンニクは細胞の内側に硫黄成分をためているが、
ニンニクを切ると、細胞の内側にあった硫黄成分が外に出て、
ニンニク内の酵素と反応し、
「アリシン」という成分に変化する。
このアリシンは、ニンニクを切ったりすったりした時に出る あの強い刺激性のあるニオイのもと。
この切り口がにおうので、アリシンができたことがわかる。
そして、ニンニクは、この強烈なニオイのもとであるアリシンで、自分たちを食べにきた動物たちを遠ざけ、身を守っている。
多くの動物は本能的にニンニクを避けるため、周りにニンニクを植えて農作物を守ることなどに使われるほど、強力なアリシン。
しかし、ニンニクにとって、強敵が現れた。それが人間。
その理由は、「火」。
人間は「火」使って、「加熱する」という手段によって、アリシンを封じ込め、刺激を無力化することに成功した。
アリシンは加熱することで、「スルフィド」という別の成分に変化し、強い刺激がなくなって食べやすくなる。
このスルフィドこそが、ニンニクがスタミナのもとである理由でもある。
スルフィドは体内に入ると、血流をよくすると同時に、脂肪を熱に変換するように働きかける。
これにより、体温が上昇し、本格的な運動をする前に準備運動をした時と同じような状態になる。
さらに、スルフィドは、「副腎」という部分も刺激して、アドレナリンの分泌を促す。
このアドレナリンの働きにより、筋肉内の血流が増えて、活発に動かせるようになる。
つまり、スルフィドが体のいろいろな部分に働きかけ、運動するための準備を整えてくれる、ということ。
また、ニンニクは、スルフィドのもととなる硫黄成分を他のスタミナ食材よりも豊富に含んでおり、効果を感じやすいという特徴もある。
人間だけが、ニンニクに火を使ったことで、たどり着くことができたスルフィドによって、我々はスタミナアップ効果を得ている。
また、火以外に酢や油を使った、「ニンニクの酢漬け」「ニンニクの油漬け」などでも、アリシンを抑えることができる。
これらの工夫により、ニンニクは、世界各地で多種多様な料理に使われ、おいしく食べられている。