なぜ小学校で逆上がりをするのか?という話がありました。
これについて、スポーツ科学に基づき逆上がりを研究している、
鴻巣暁 先生(東京大学 教養学部 助教)が、説明していました。
もともと、鉄棒などの器械体操は、ドイツで生まれたもの。
1811年、ドイツの教育者、ヤーンによって、体操が生み出され、
その時に「鉄棒」も誕生した。
そして、明治初めごろに日本に伝わったとされていて、
その頃は、兵士の訓練などに使われていた。
そして、1913年に、逆上がりが小学校の授業に採用され、
当時は「尻上(しりあがり)」といわれていた。
では、なぜ小学校の授業で逆上がりをさせるようになったのか?
その大きな理由の1つが、子どもたちのその後の人生に強い影響を与える、
「成功体験」を手に入れてもらうためと考えられる。
そもそも、逆上がりは日常生活であまりすることのない回転がメインの運動のため、
多くの子どもたちにとって、初めは失敗する難しい技。
しかし、逆上がりには、難しいだけでなく、筋力が弱い子どもでも、努力次第で十分成功させることが可能という一面もある。
子どもは筋力が弱いが、体重が軽いため、逆上がりに必要な「踏み込み」や「体重移動」などのコツを
時間をかけて練習すれば、十分成功させることが可能。
そして、すぐには成功できない逆上がりという課題に対し、どうすればできるかを考えて乗り越える。
この成功体験を通して生まれた自信は、
子どもたちの その後の人生にも大きな影響を与える という考えで、
小学校の授業で、逆上がりが採用されたのだと思われる。
昭和33年に制定された小学校の学習指導要領には、
「いずれの学校においても、取り扱うことを必要とするもの」という項目の中に、
「さか上がり」の記載がある。
このように、必修とされていた逆上がりだが、現在、ゆとり教育の開始や、全国的な子どもの体力や運動能力の低下などにより、
難しい逆上がりは、必須項目ではなくなってしまった。
しかし、ジャンプやステップなどのあらゆる運動の基礎を身につけることができ、
子どもたちの精神的な成長も期待できる特別な技でもあるため、
現場の先生たちの熱い思いにより、現在でも小学校で、逆上がりは続けられている。