鼻の下にある溝は何?という話がありました。
これについて、樋口桂 先生(文京学院大学 解剖学 教授)が説明していました。
鼻の下の溝は、専門用語で「人中(じんちゅう)」または「上唇溝(じょうしんこう)」と呼ばれる。
口の周りの部分は、唇だが、鼻の下の溝の部分だけは、もともと鼻の一部だったもの。
鼻の下の溝はどうやってできるのか?
お母さんのおなかの中で、赤ちゃんの顔ができ始めるのは、妊娠4週目ごろ。
その時、顔は、頭と左右の上唇、左右の下唇の5つのパーツに分かれている。
妊娠5週目になると、
頭のパーツに鼻の穴が現れ、
その後、顔の両脇に目が現れる。
この時、両目は魚のように横にあり、鼻の穴は大きく頭についている。
人類を含む脊椎動物という背骨を持った生き物の進化は、
魚類から始まって、両生類、は虫類、哺乳類という進化をたどってきている。
実は、ヒトの赤ちゃんが、お母さんのおなかの中で、形づくられていく様子は、
この脊椎動物の進化と、よく似たプロセスをたどっている。
つまり、赤ちゃんは最初、魚のような形から始まって、成長が進むと、
目と鼻は、どんどん顔の真ん中の方に集まってくる。
ここで、注目すべきなのが、
左右の上唇のパーツが、真ん中に寄ってきてくっつく時。
目や鼻がどんどん、顔の正面に移動すると同時に、
鼻の穴の内側の緑部分が下に伸びて、上唇パーツに挟まれる。
鼻の下に溝があるが、その両側に盛り上がっている縦のラインは、
左右から伸びてきた上唇のパーツと、真ん中の鼻の部分が、下に伸びてきた鼻のパーツがくっついたつなぎ目の部分。
つまり、鼻の下の溝の正体は、もと鼻だと考えられる。