なぜ特急列車の座席は倒せるのか? という話がありました。
鉄道ジャーナリストの梅原淳さんが説明していました。
日本初の特急列車が誕生したのが、40年前の1912年。
当時は、座席が倒せる特急列車の車両はなかった。
座席を見てみると、背もたれは倒せない作りになっている。
その後、特急列車は、ボックスシートが主流になったが、
やはり、倒すことはできなかった。
背もたれが倒せるリクライニングシート導入のきっかけとなったのは、
戦後、日本を占領したGHQ。
終戦後、GHQは鉄道を使って全国を視察。
戦前から、アメリカでは長距離移動の列車は、座席が倒せるリクライニングシートが 一般的。
しかし、戦後の日本の長距離列車は、このように座席が倒せないボックス型が主流。
日本人の体型に合わせて作ってある座席に、彼らが座れば当然窮屈。
彼らには苦痛でしかなかった。
そこで、GHQは国鉄に対して、リクライニングシート付き車両の製造を命じた。
そして、誕生したのが、「スロ60」。
これは、「特別2等車」といって、今でいうグリーン車に相当する車両。
国鉄は、この車両を一般客にも使ってほしいと、
リクライニングシートでの旅をPRするパンフレットを作成。
そこには、リクライニングシートに不慣れな日本人のために、
使い方も分かりやすく説明されていた。
当時、リクライニングシートを体験した人は、
理髪店のイスが列車に乗って走っているようだと、例えたという。
そして、1972年になると、国鉄はグリーン車両だけでなく、一般車両にもリクライニングシートを採用。
その座席は快適だと話題を呼び、私鉄各社も次々と取り入れ、
現在では、日本のほぼすべての特急列車の座席が倒せる。