先生をお母さんと呼んじゃうのはなぜ?:チコちゃんに叱られる!【2022/07/15】

先生をお母さんと呼んじゃうのはなぜ?という話がありました。

これについて、心と言葉の関係について研究している、

広瀬友紀 先生(東京大学 総合文化研究科 教授)が説明していました。

人は、自分が覚えた言葉を脳の中に記憶して、また使えるように整理していく。

これを心の中の辞書っていう意味で、心理言語学的には、「心的辞書」という。

心的辞書とは、個人が記憶・習得した単語の集まりで、

その数は、成人で3万〜5万語と言われている。

人が言葉を発する時に、この心的辞書を検索して、言いたい言葉を口に出すが、

この過程で、取り出し間違いが起こることがある。

そのため、生徒「お母さん・・・あっ」、先生「先生ですよ〜」や、

子ども「ただいま〜」、母親「おかえり〜」、子ども「先生、今日さぁ〜」と、

先生をお母さんと言ってしまったり、母親を先生と言ってしまったりするのは、

心的辞書の中で「先生」を検索したのに、「お母さん」を間違って取り出してしまうから。逆も然り。

このような言葉の取り出し間違いは、

言い間違い【1】音が似ている言葉

心的辞書から自分が言いたい言葉を探す時、例えば「ひじ」「ひざ」など、音が似ている言葉が近くにあった場合、間違った言葉が競争に勝ってしまい、言い間違いが起こってしまう。

世の中の言い間違いをまとめた本がこちら。

例1:フィアンセ、・フィナンシェ
例2:コールスロー、・ロールス・ロイス

言い間違い【2】概念的に似ている言葉

つまり、エレベーターとエスカレーターなど、

「デパートにある」という共通点を持つ言葉は、心的辞書の中で競争相手になりやすく、間違った言葉が競争に勝ち、言い間違いが起こってしまう。

子どもにとって、概念的に似ている例の典型として、「先生」と「お母さん」が挙げられる。

子どもから見ると、この2つの言葉は、概念のグループが 一緒になりやすい。

例えば、「頼りになる大人」とか、「面倒を見てくれる」とか、「いろいろ教えてくれる」とか、

共通しているので、競合しやすいと思われる。

この先生と親を言い間違える現象は、他の国でも見られる。

この心的辞書は、どのようにして言葉が増えていくのか?

【1〜2歳】

初めて言葉を話す時点では、心的辞書はまっさらで、

子どもは、言葉が実際に使われている状況から、意味を理解していく。

【2歳半】

この時期に、言葉を覚える中である大きな変化が訪れる。

個人差はあるが、一気に語彙の数が増える、いわゆる「語彙の爆発」が起こる。

海の生き物に詳しかったり、電車の種類に詳しかったり、

この語彙の爆発が起こると、好きなものや興味によって語彙数に個性は出るが、

2歳で約300単語、3歳で1000語前後を覚えると言われている。

そして、この時期、多く現れる言い間違いがある。

それが、発音のエラー、音の入れ代わり。

正しい単語を心的辞書から取り出せているのに、それを口にする段階で、音が入れ代わってしまうという間違いがある。

特に、幼いうちは、うまく発音できない音もある。

・シャボン玉 → さぼん玉
・エレベーター → エベレーター
・とうもろこし → とうもころし
・ポップコーン → コップポーン
・スパゲッティ → スパレッティ など。

その後、成長するにつれ、うまく発音できないというエラーは、少なくなっていく。

そして、心的辞書にある言葉の数は、小学生で2万語、中学生で4万語、高校生になると4万5千語にもなるという。

そして、大人になっても、心の辞書で隣に並んだ言葉の取り出し間違いは起こる。

ちなみに・・・、
心の辞書の中では、その持ち主の知識・経験・状況などで、言葉の並び方が常に変わる。
なので、先生とお母さんは、誰もが隣にあるわけではない。