なぜ嫌なことは妙に覚えているのか?という話がありました。
楽しいことは、ざっくりしか覚えていないのに・・・。
これについて、人間の行動と心理について研究する、
戸梶亜紀彦 先生(東洋大学 社会学部 教授)が、説明していました。
嫌なことを覚えているのは、同じ目にあわないように対策するため。
酔っ払って潰れてしまったら、もうお酒は飲まない。
恋人へのメールを会社の人たちに送ってしまったら、次は送信前にしっかりと確認する。
といったように、嫌な出来事の記憶は、
将来、同じようなことが、再び起こらないよう、
教訓のような役割を果たしている。
大抵の場合は、楽しいことよりも嫌なことの方が、より細かく覚えている。
その理由は、記憶の仕方には、嫌な時は「きっちり」、楽しい時は「ざっくり」という、2つのパターンがあるから。
嫌なことは細かい状況まできっちりと、楽しいことは何をしたかだけをざっくり覚えている。
嫌なことが起きたり、その前触れを察知すると、人間の脳は、その瞬間に、たくさんの情報を集める。
例えば、お酒を飲んで帰りが遅くなり、妻に怒られている夫の場合で説明すると、
まず、「まずいことになったな」と、夫の脳内でアラートが鳴る。
すると、この事態に対応するため、話の内容や状況・音・光・温度など、周囲の情報を集める。
そして、次に同じことを繰り返さないように、これらの情報をきっちりと刻み込む。
よく交通事故の時に、スローモーションのように見えるというが、
実はこれも、危険を感じて対処しようとしているから。
周囲の情報を1つ1つ記憶しようとすることで、時間の流れが遅く感じるようになる。
逆に、楽しい時は、経験に満足し、周囲の情報に注意が向かなく、「楽しい」「遊んだ」など、ざっくりした記憶になる。
このように、同じ悲劇を繰り返さないなめ、無意識のうちに、周囲の情報をたくさん集めているから、嫌なことは妙に記憶に残る。
では、嫌な出来事を忘れる方法はあるのか?
嫌なことは、ため込むことがよくない。
人に話したり、紙に書いたりして、外に出すことでスッキリすることもある。
ちなみに、よく、楽しい時間は早く過ぎて、ツラい時や退屈な時間は経つのが遅く感じることがあるが、
これも、嫌なことを覚えているのと、同じ現象が起こっているから。