「サッカーのスローインを両手で投げるのはなぜ?」という話がありました。
サッカーでは、ボールが 一度 タッチラインを割ると、
両手を使い、スローインでプレーが再開される。
キーパーは、片手で投げているのに、
なぜスローインは両手なのか?
これについて、日本のサッカージャーナリストの先駆け、後藤健生さんが説明していました。
スローインは、両手でボールを持ち頭の後ろから投げる と決まっている。
ただ、最初にサッカーのルールが出来た19世紀。
そういう決まりは、一切なく、自由に投げていた。
片手で投げても、よかった。
サッカーの起源とされているのは、「モブフットボール」というイングランド発祥のスポーツ。
チームの人数、コートの大きさに決まりはなかった。
街や川で、なんでもありのルールでボールを奪い合う。
今のサッカーとは、全く違う形をしていた。
19世紀頃に入った頃に、上流階級の子どもたちが通う私立学校「パブリックスクール」では、フットボールを授業の一環として教えた。
しかし、授業ならば、ルールなしでやるわけにはいかない。
そこで、ロンドンにあるいくつかのクラブと学校が集まり、新しいルールを作るため会議を開催。
1863年、フットボール協会発足。
グラウンドの大きさや、ボールを持って走ってはならない、など、
ようやく、今のサッカーにもつながる共通のルールが誕生した。
これが、現代のフットボールの始まり。
その当時のスローインは、片手投げ、両手投げ、どんな投げ方をしてもよかった。
では、いつから両手で投げるようになったのか?
そこで、1人のサッカー選手が大きく関係してくる。
それが、ウィリアム・ガン選手。
この選手は、身長が190cm近くあった。
しかも、足が速かった。
イングランド代表で活躍していたが、彼にはもう一つ大きな武器があった。
それが、肩の強さ。
片手で、サッカーボールを50m以上飛ばしたという。
50mがどれほどすごいのか、現役大学生サッカー選手(東京経済大学サッカー部)で検証する。
このグラウンドの大きさは、片面52.5m。
ウィリアム・ガン選手は、ゴール付近までボールを投げられたことになる。
現役大学生は、どれほど投げられるのか?
ディフェンダーで33m、普段から片手でボールを投げているゴールキーパーでも、36.9mだった。
13m以上の差がある結果に、ウィリアム・ガン選手がいかにスゴいかが分かる。
なぜ、彼は肩が強かったのか?
実は、サッカーだけでなく、クリケットの選手でも有名。
クリケットとは、競技人口が約3億人のイングランド発祥のスポーツ。
「ボーラー」と呼ばれる選手が、ワンバウンドでボールを投げ、それを「バッツマン」が打つという野球とルールが似ている競技。
ウィリアム・ガン選手は、野球でいうと、強肩の外野手みたいな選手として、クリケットで活躍していた。
彼は、フットボールとクリケットの2つのスポーツをしていたのか?
当時はフットボールは、冬のスポーツだった。
そして、クリケットが、夏のスポーツ。
だから、1人の選手が、夏はクリケット、冬はフットボールをするというのは、普通のことだった。
こうして、二刀流で活躍していたウィリアム・ガン選手。
ところが、
ウィリアム・ガン選手の遠くに飛びすぎるスローインに、直接ゴールも狙えてしまうことに、クレームが集まり、片手投げが禁止になった。
こうして、1883年、スローインは正式に、両手投げルールになった。
長所を封じられてしまったウィリアム・ガン選手は、その後、サッカーを引退。
クリケットに専念した。
しかし、最近のサッカーでは、両手投げでもとんでもない距離を投げる選手がいる。
その選手とは、元U-23イラン代表のナーデル・モハマディ。
その驚くべき、彼のスローインがこちら。
ハーフウェーライン付近から1回転して、ゴールまで投げる。
大砲のような、ハンドスプリングスロー。
スローインの世界記録は、59.817m だが、
モハマディ選手のスローインは、それを超えているのでは?と話題になっている。