なぜ人は、ウソをつくようになる?という話がありました。
これについて、子どもの心の発達について研究する、
林創 先生(神戸大学大学院 人間発達環境学研究科 教授)が説明していました。
人は早くは2歳半〜3歳ごろからウソをつきはじめるようになる。
ただし、最初のウソはシンプルに事実を否定するだけのものになる。
親「ごはんの前だからお菓子食べちゃダメよ」
と、言われたのに、ガマンできずに食べてしまった子どもが、
親「食べちゃったの?」
子ども「食べてない」
と、否定する。といったもの。
これは、主に自分が怒られないためにつくウソだといわれている。
しかし、4歳〜5歳ごろになってくると、
「意図的なウソ」がつけるようになってくる。
例「私ね、実はチコちゃんのお父さんなんですよ」
これでだまされた方はいないと思うが、このように相手に事実とは違うことを信じさせるためにつくのが、意図的なウソ。
心理学の研究で、子どもが意図的にウソをつけるかどうかを試す実験がある。
人形劇で、3匹の動物(キリン・ウサギ・オオカミ)がいる。
ウサギとキリンは、とても仲のよい友だち。
しかし、ウサギはオオカミのことがキライ。
この関係を覚えておいてください。
ある所に、赤い家と青い家がある。
そこへ、ウサギが現れる。
ウサギ「あとで友だちのキリンさんに会いたいんだけど、今オオカミから逃げているの、赤い家に隠れるから、オオカミから守ってね!」
そう言うと、ウサギは赤い家に隠れた。
すると、しばらくしてオオカミが現れ、
オオカミ「ウサギはどこだ?なぁ、ウサギがどこにいるか教えてくれよ!」
と言った。
さて、皆さんはどう答えますか?
実験によると、5歳児以上は、「ウサギは青い家にいる」や「知らない」と答えた。
このように、ウソがつけた。
さらにオオカミが去った後、キリンが現れて同じようにウサギの居場所を聞くと、
今度は、赤い家を指して、「ウサギは赤い家にいる」と本当のことを教えた。
この実験から、相手によって、伝えるべき情報を変えているということがわかる。
オオカミにだけ事実と違うことを伝えているということから、意図的にウソをつくことができたといえる。
一方、4歳児の半数は、キリンにもオオカミにも「ウサギは赤い家にいる」と答えた。
このように、ウソがつけなかった。
この差は、一体なんなのか?
その違いは、自分とオオカミの心の中が別々のものであると知っているか。
自分はウサギが赤い家にいることを知っているが、オオカミはそれを知らない。
5歳以上になると、この違いをハッキリと認識して、だからこそ、「事実とは違うが、自分がこう言えば、相手はこう思うんじゃないか?」という発想が生まれ、ウソをつける。
しかし、幼い子どもは、この違いをうまく意識できないため、オオカミの心の中を考えずに、自分の知っている本当のことを伝えてしまう。
この違いが生まれるのは、主に4歳〜5歳の間に、心の理論が発達するから。
自分と他人の心の中が違うものであり、人はそれぞれの気持ちや考えによって行動するのだと、理解することをいう。
様々な経験をしたり、ことばを覚えていく、主に4歳〜5歳ごろに、この心の理論が大きく発達していくといわれている。
つまり、ウソをつくようになるのは、成長している証し。