ここに、大きめの鏡とメガネふきがある。
この2つを使って、実験をしてみる。
まず、鏡を体の前に、体に対して垂直に置く。
そして、メガネふきを鏡から少し離れた所に置く。
次に、鏡の面を覗き込みながら、その鏡を挟むように、両手をゆっくりと前に出す。
鏡を中心に、左右対称の形で両手を置いたら、
鏡を覗き込んだままで、両手の親指で同時に、机をたたく。
次に、人差し指、中指、薬指、小指と、順番に机をたたき、
この動作を3回続ける。
この時、鏡の反対側にある手は見ないようにする。
ここまでできたら、鏡をのぞいたまま、右手と左手で同じ動きをしつつ、
メガネふきを指先でこする。
ここで、不思議なことが起きる。
実際には何にも触れていない右手に、まるで重さが全くない、不思議な布を持っているかのような感覚を感じることになる。
なぜ、こんな感覚が生まれるのか?
先ほどやってもらった机を指でたたく作業。
この作業で、脳は無意識に、鏡の中に映る左手を鏡の向こう側にある右手だと思いこんでしまっていた。
そして、メガネふきに触った時、右手はメガネふきに触っているように見えるのに、
実際には、右手は何にも触っていなかった。
この時、脳には、目から入ってくる、「右手はメガネふきに触っている」という情報と、
右手からの「何も触っていない」という情報、
この2つの矛盾した情報が入ってくる。
これを解釈するため、脳は現実にはありえない、
「重さが全くない、限りなく薄い布に触っている」という不思議な感覚を作り出していた。
この実験を試すには、なるべく薄いなめらかな布を使うとよい。