大きな地震が起こった時に、携帯電話から大きな音が鳴る。
「ブイーン、ブイーン」みたいな音。
なぜ、携帯電話の緊急地震速報は、あの音なのか?
緊急地震速報システムの土台を作った 山田真澄 先生(京都大学 防災研究所 准教授)が説明していました。
大きな地震が来ることを知らせる緊急地震速報システムを作るキッカケは、阪神・淡路大震災(1995年国内で初めて震度7を観測)。
この地震を受けて、揺れが来る前に地震を知らせるため、2003年ごろから気象庁を中心に、テレビの緊急地震速報を開発、2007年に運用が開始された。
ちょうど、その頃、携帯電話も広く普及し、2007年12月から携帯電話の緊急地震速報も開始。
その時、国民に瞬時に危機意識を持たせるために作られたのが、あの音。
大手電話会社の依頼内容で、「寝ている人も起こせるような、びっくりする音」が依頼されたという、環境音楽家の小久保隆さんによると、
作られた音には、3つのコンセプトがある。
スウィープ音
我々がよく耳にする五線譜で表せる楽音ではなく、
スウィープ音は、低音から高音または高音から低音へ短時間で変化する音。
代表的なスウィープ音のひとつが、救急車のサイレン。
例えば、段階的に変化する楽音だと、脳に瞬時に響かない。
一方、サイレンのように日常的に耳にしないスウィープ音だと、脳の反応が早い。
周波数
緊急地震速報は、伝わりやすい周波数を使っている。
携帯電話は、カバンやポケットなどにしまわれているので、音は布を通して聞くことが多い。
布には、吸収しやすい周波数がある。
携帯電話のスピーカーは小さくて、機種によって出にくい音もある。
そこで、低音から高音、すべての周波数を持つ音にすることが重要。
3回繰り返す
3回の連続音は、心理的にも特別な意味がある。
例えば、トイレのドアをノックする時、1回だけ「コン」と鳴らす人は、あまりいない。
2回の「コンコン」だと最も一般的。
しかし、3回の「コンコンコン」だったら、「なんだろう?」と少し気になる。
そのため、緊急性を要する時は、3回の連続音が効果的。
この3つのコンセプトをもとに作られたのが、我々が耳にする緊急地震速報の音だった。