なぜ食パンを焼くとおいしくなる?という話がありました。
食パンをトーストすると、外がカリッ、中がもっちりして美味しくなる。
これはなぜか?
これについて、山田昌治 先生(工学院大学 先進工学部 博士)が説明していました。
外側のカリッとした部分は、熱を加えることによって、
パンの糖分とアミノ酸が化学反応を起こしたもの。
きつね色になり、香ばしさが出る。
とりわけ重要なのが、中のもっちり感。
あの食感は、パンの中にあるデンプンが水分を取り込むことによって生まれるが、
実は、パンを焼くと温かくなった表面の水分が中心部分に集まってくる。
一部の水分は表面から蒸発するが、
同時に、表面から中心に移動してくる水分もある。
これが、あの「もっちり・ふんわり」を生み出している。
しかし、なぜ、水分が中心に集まってくるのか?
これは、宇宙の真理「エントロピー増大の法則」が、はたらいているから。
エントロピーとは、簡単に言うと「乱雑さ」のこと。
この世の出来事のすべては、放っておくと乱雑さが増えていく。
そして、それは決して自然に元に戻ることはない。
例えば、コーヒーにミルクを入れると、
コーヒーだけミルクだけの整理された状態から、お互いが自然に混ざり合って乱雑な状態、
つまり、ミルクコーヒーという、どの部分も均一の状態になろうとする。
そして、これが勝手に元のコーヒーとミルクに戻ることはない。
この乱雑さの具合がどんどん増えていくことを「エントロピー増大の法則」という。
これと同じことが、食パンにも起きている。
パンを焼くと、まず熱源に近い所から温まるため、表面は高温、中心部分は低温になり、温度差が生まれる。
つまり、高温だけの場所、低温だけの場所があるという整理された状態。
すると、エントロピーの法則によって、高温と低温が混ざり合い、
パンの中の温度が均一になろうとする。
ここで大事なのが、熱におけるエントロピーの法則は、
「必ず高温から低温に移動する」という決まりがある。
そして、熱は(パンや空気を)伝わるよりも水分をともなうと早く移動できる。
つまり、温度差をなくすために、表面に集まった水分が、中心部分の冷たい所に集まってくる。
つまり、宇宙の真理、エントロピーの法則によって、外側の水分が中心に集まるので、
もちもちとした美味しい食感になる。