赤ちゃんをだっこして歩くと泣き止むのはなぜ?という話がありました。
これについて、赤ちゃんの行動を科学的に研究している 木村菜美 先生(広島大学 脳・こころ・感性科学研究センター 研究員)が説明していました。
赤ちゃんをだっこして歩くと泣き止むのは、自分とパパ・ママの命を守るため。
ことばを話したり、自分のちからで歩いたりできない赤ちゃんにとって、自分の命を守ってくれる一番の存在は、パパとママ。
だから、自分の命を守るためには、パパとママの命を守る必要がある。
「みんなの命を守るためには、泣き止めばいい」ということを、赤ちゃんの体は本能的に知っている。
私たちの祖先の時代は、常に危険と隣り合わせの生活を送っていた。
文明が発達する以前、厳しい自然の中で生活する人類にとって、災害に見舞われたり、敵に襲われたり、命の危険は、どこにでもある。
例えば、パパ、ママ、赤ちゃんの家族が、日向ぼっこをしていた時、突然、猛獣がこちらに向かってきたとする。
命を守るには、まず逃げないといけない。
赤ちゃんを抱きかかえて逃げないといけないが、そんな時に、赤ちゃんが泣いていると、
泣き声で敵に見つかってしまう可能性が高くなるし、暴れていてはパパやママが走りづらく逃げ遅れてしまうので、
赤ちゃんは、泣き止んで大人しくなる。
このような赤ちゃんの習性が本能として、現在も残っていると考えられる。
実際に、赤ちゃんがお母さんに抱かれて歩いている時、
どのような状態なのか、心拍数を調べてみた。
こちらのグラフは、上に行くにつれ、赤ちゃんは興奮状態に、下に行くとリラックス状態になっていることを示す。
泣いている赤ちゃんを座ったままだっこしている時、
興奮状態なので、高い所でグラフが動いている。
そこから、お母さんが歩き始めると、赤ちゃんは泣き止んでリラックス状態になった。
心拍数も低い所で安定している。
再び、お母さんが座って歩くのを止めると、心拍数は上がり、赤ちゃんは泣き始めた。
ちなみに、ベビーカーに乗せて動かした時にも、だっこして歩いた時と同じように、運ばれていると感じた赤ちゃんは、泣き止むことが多かった。
つまり、大事なのは、だっこ自体よりも「動き」や「運ばれている感覚」だった。
この、赤ちゃんが親に運ばれる時、泣き止み大人しくなる反応を「輸送反応」と呼ぶ。
この反応は、人間だけでなく、哺乳類の赤ちゃん全般に備わっている。
ちなみに、赤ちゃんをだっこして寝かして、ベッドに横にした瞬間に、起きる「背中スイッチ」があると言われているが、
実は、このスイッチは、背中ではなく、だっこしているパパとママとの接触面、お腹にある。
赤ちゃんをベッドに寝かせる時の心拍数を調べる実験をしたところ、
ベッドに背中がつくよりも、前の赤ちゃんのおなかが離れる瞬間に、心拍が速くなって目覚めやすくなっていた。
そんな時は、赤ちゃんの眠りが深くなって安定してから、眠り始めてから8分ぐらい経ってから、ベッドに寝かせると起きづらくなる。
赤ちゃんを深く眠らせるためには、ゆらしたりせず、じっとだっこして座って待っているとよい。