なぜ都会の人は冷たいのか?という話がありました。
これについて、日常の人の心と行動の仕組みを研究する社会心理学者、渋谷昌三 先生(目白大学 名誉教授)が説明していました。
都会の人が冷たいといわれるのは、都会の人が田舎の人に比べて情報が多いから。
例えば、田舎の風景は、山や川など自然がいっぱいあって、道も単調で、情報そのものが非常にシンプル。
それに比べて、都会の方は、ビルがたくさん立ち並んで、道は複雑で車が多い。
広告や看板なども、いろんなものがある。
さらに、人の動きなど、非常にたくさんの情報が目に入ってくる。
都会の情報量は、異常なほど膨大。
そういう情報が非常に多い環境のことを「過剰負荷環境」と呼ぶ。
私たちにとって、処理できないくらい、たくさんの情報がある状態、または環境のこと。
過剰負荷環境である都会では、街を歩いているだけで入ってくるたくさんの情報を全て処理しようとすると、とても多くのエネルギーを使う。
これが続くと、体は疲れ、心も余裕がなくなり、まともな日常生活が送れなくなってしまう可能性がある。
すると、心と体を守ろうと入ってくる情報を増やさない行動を取る。
例えば、他人に道を聞かれた時に、必要な情報だけ教えて短い時間で終わらせようとしたり、
電車内で目をつぶって寝たフリをするのも、周りからの余計な情報を入れないようにしている行動のひとつ。
都会の人は、最小限の接触で、効率的なコミュニケーションを心がけている。
この「なるべくムダな関わりを避ける」「余計な情報を入れない」という行動が、
そっけない態度に見え、「冷たい」と思われてしまう。
さらに、人がたくさんいる都会では、ある特徴的な行動を取る。
それは「責任回避」という行動。
これは、人任せにしてしまうということ。
例えば、道で人が倒れていたら、人の少ない田舎では、「自分が助けなければ助からない」とすぐに声をかけ、救急車を呼んで助けようとする。
一方、人の多い都会では「自分が助けなくても誰かが助けるだろう」と、通り過ぎたり、ただ見ているだけで、行動に移すことができず、救助が遅れてしまったという事例もある。
助けを待っている人からすると、「なんて冷たい人なんだ」という感じを持つことになる。