なぜ「あの曲が頭から離れない現象」が起こるのか?という話がありました。
頭の中で同じ曲が何度も流れて、なかなか離れないことがある。
これについて、関口貴裕 先生(東京学芸大学 教育心理学講座 教授)が説明していました。
曲が頭から離れない現象は、「イヤーワーム現象」と呼ばれている。
英語で「イヤー」は耳、「ワーム」は虫のこと。
「曲が頭から離れない現象」を耳に虫が入り込んで鳴き続けている様子に、例えて名付けられたといわれている。
この現象は、なぜ起こるのか?
イヤーワームを学術的に研究するようになったのは、この10年くらいのことなので、まだわかっていないことが多い。
イヤーワームの研究は、2000年代初頭には行われていたものの、研究が増えてきたのは2010年ごろ。
世界でも研究している人が少ないため、まだ明らかになっていないことも多い。
その中でも、わかってきたことが、イヤーワームが起こる原因として、今のところ、
大きく2つの仮説が考えられている。
1つ目の仮設は「脳が曲の続きを聞きたがっている」
曲を聞く時、人間の脳は、「視覚野」という部分が反応し、1曲を最後まで聞き終えると、その反応も止まる。
しかし、曲が途中で止まった時、頭の中で続きが流れることがある。
この現象に目をつけたアメリカダートマス大学の脳科学研究チームが実験したところ、
「知っている曲が途中で無音になった時、視覚野は大きな活性化を引き起こした」と、
視覚野は反応を続けることが照明された。
このことから、脳が途中で終わってしまったことに対して、もどかしさを感じ、
「続きを聞きたい!」という風にウズウズしているのではないか。
そのウズウズを解消するために、イヤーワームが起こるのではないかと、仮設が立てられた。
しかし、短い完結した曲でもイヤーワームは起こる。
例えば、ラーメン屋のチャルメラのような街で聞く短い曲やCMソングなど、完結しているのに、それが頭の中で流れ続けることもある。
そこで、2つ目の仮設は「脳が”メロディーのループ”から抜け出せなくなってしまう」
イヤーワームというのは、頭の中で「音楽が聞こえる」という現象ではなく、「頭の中で歌っている」と考えられている。
曲を思い出しながら、頭の中で歌っている。
これまでの研究では、イヤーワームは、頭の中にあるスピーカーから曲が流れてくるというイメージが持たれていた。
しかし、より最近の研究では、無意識に自分自身が頭の中で、曲を思い出しながら歌っているのではないかと、考えられている。
イヤーワームは、曲をただ聞くよりも、曲を聞きながら一緒に歌うと起こりやすくなる。
つい口ずさんでしまったら最後、頭の中で歌が始まってイヤーワームにハマってしまう。
そのカラクリは、こう。
曲の多くは同じメロディーを繰り返す「ループ構造」を持っている。
脳が、曲を思い出しながら、頭の中で歌う過程で、ループの終わりの部分になると、
メロディーが持つループにつられて続きの部分ではなく、ループのはじめの部分を思い起こしてしまい、
同じ所ばかりを繰り返し歌ってしまう。
例えば、YOASOBIの「夜に駆ける」の曲の場合がこちら。
つまり、脳がそのループから抜け出せなくなってしまうから、イヤーワームが起こるのではないかと考えられている。