サバンナにたくさん動物がいるのはなぜ?という話がありました。
ジャングルと比べて、サバンナには水も植物もあまりない。
なのに、なぜライオンやシマウマ、キリンなどのたくさんの野生動物がいるのか?
これについて、日本の農業を発展させるために世界中の草を調べている、
吉村泰幸研究員(農研機構 農業環境研究部門 主席研究員)が説明していました。
サバンナにたくさんの動物がいるのは、奇跡の草「C4植物」が生えているから。
私たちが、普段目にしている普通の植物は、C3植物と呼ばれている。
そのC3植物が過酷な状況でも生きられるように、奇跡の進化を遂げた姿がC4植物。
植物は、光合成をする。
これは、日光、水、空気中の二酸化炭素を取り込んで、成長するための栄養を作る仕組み。
この仕組みは、地球上に植物が生まれてから、今も変わらない。
しかし、大昔に地球の二酸化炭素が、急激に減ってしまい、これでは光合成しづらいという危機を迎えたことがある。
陸上に植物が誕生したのが、約5億年前。
そのころの地球の空気中には、15倍ほどの二酸化炭素があった。
そして、約1000万年前、地球が急激に寒くなり、海水の温度が下がると、
冷たい水に溶けやすい二酸化炭素が海水に溶け、空気中の二酸化炭素が減ってしまった。
そこで、一部の植物は少ない二酸化炭素で効率よく栄養を作れるように進化。
これが、C4植物。
こちらは、バージョンアップする前のC3植物の葉の断面。
緑の部分が光合成をする葉緑体を含んだ細胞で、
C4植物には、この緑色が濃くなっている所がある。
ここに、二酸化炭素をため込むことができるようになった。
つまり、体内に二酸化炭素をため込んで、濃くしてから使うことができ、普通の植物より効率よく栄養が作れるようになった。
こうして、C4植物は少ない二酸化炭素でも充分な光合成をできるスーパー植物になった。
(では、ジャングルもC4植物になればいいのではないか?)
実は、それは難しい。
C4植物の特徴として、生きるためにたくさんの光が必要。
だが、ジャングルや森の中では、背の高い木などに日光を遮られ、生きていくことが難しい。
一方、サバンナを見ると、日陰はほとんどない。
さらに、C4植物は乾燥にも強くなった。
二酸化炭素が少ない環境でも生きていけるC4植物は、二酸化炭素を取り込む穴も小さくて済むので、体の中の水分が外に逃げづらい。
乾燥に強いC4植物にとって、強い日光の当たるサバンナは絶好の環境。
サバンナでは、生えている植物の9割がC4植物。
草食動物たちは、このC4植物を食べて生きている。
(サバンナは、植物が豊富な環境ではない気がするが、その数は足りているのか?)
C4植物は、たくさん光合成をするので、成長スピードも他の植物に比べて早い。
雨季に雨が降ると、C4植物は数日間で、一気に成長し大地を埋め尽くす。
そのため、動物に食べられてもすぐに生えてくるので、食べても食べても足りなくなることはない。
だから、実はサバンナは植物が豊かで、動物にとってすばらしい環境。
C4植物を食べて草食動物が増えると、その草食動物を食べる肉食動物も増える。
このように食物連鎖を繰り返しながら、サバンナではそれぞれが数を増やしてきた。
C4植物は、私たちの身近でも見ることができる。
例えば、日当たりのいい駐車場の隅やレンガの隙間に生えている雑草、猫じゃらしなどもC4植物。