コンクリートがカチカチになるのはなぜ?という話がありました。
これについて、セメント化学について研究している 坂井悦郎 先生(東京工業大学 名誉教授)が説明していました。
ビルなどの建物や家の基礎、橋、トンネルと、街の至る所で見かけるコンクリートだが、
実は、約9千年前のイスラエルの住居で、似たものが使われていることが分かっている。
約2千年前の古代ローマ時代に建てられたコロッセオや、
カラカラ浴場なども、
材料や製造方法は少し異なるがコンクリートが使われていた。
その後、18世紀後半。
イギリスの産業革命で発明された作り方が、現在まで受け継がれている。
古くから使われているコンクリート。
一体どんな材料で作られているのか?
コンクリートは、セメントに水を混ぜて、砂と砂利を合わせて作られている。
メインの材料のセメント、その主原料はサンゴなど海の生物の死骸が、
積み重なってできた石灰石。
この石灰石に、粘土やガラスの元になっているケイ石、酸化鉄などを加えて、
1450℃で焼いた後、石こうを少し入れて粉状にしたものが、セメント。
コンクリートは、セメントに水、砂、砂利を混ぜて、生コンクリートと呼ばれるドロドロな状態のものを作る。
その生コンクリートを型枠に流し込んで時間が経つと、カチカチのコンクリートになる。
なぜ、ドロドロがカチカチになるのか?
セメントに水を加えると、「水和反応」という化学反応が起きて、「エトリンガイト」という物質が誕生する。
これが、セメントの粒子の周りに誕生して、トゲトゲした形になる。
水を加えた直後のセメントは、細かな粒子が水に流され動き回っている。
しかし、2〜3時間ほど経つと、粒子の周りに徐々にエトリンガイトが誕生。
トゲトゲした形になるため、セメントの粒子は互いに絡み合い、固まっていく。
すると、ここに、もう1つの物質が誕生する。
セメントに水を入れて、数時間経つと、「C-S-H」という非常に小さな結晶ができ始める。
「C-S-H」は、カルシウムやシリカを含むセメントが水に反応して誕生。
セメントの粒子と粒子の隙間をぎっしり埋めて、カチカチになる。
コンクリートはエトリンガイトによって固まって、「C-S-H」によって硬くなると理解するとよい。
つまり、コンクリートがカチカチになるのは、水和反応によってセメントが水に反応し、固まる物質を出すから。
かさを増やすために、一緒に入れた砂や砂利は、セメントに覆われて固まる。
ちなみに、コンクリートは、約28日間で使える硬さになるが、
その後も、コンクリートの中で、化学反応は続くため、1年2年と時間が経つにつれ、強度が増していく。
では、コンクリートは一体どれくらい硬くなるのか?
ある実験が行われた。
超高層マンションやビルの1階の柱にも使われる「超高強度コンクリート」。
この円柱のコンクリート(直径10cm、高さ20cm)に、上から力を加えていく。
軽自動車1台分くらいの1トンぐらいの力では、何も起きない。
次に、トラック1台分くらいの10トンぐらいの力でも、何も起きない。
その後も、20トン、30トン、40トンと力をかけても、何も起きなかった。
そして、ジェット旅客機くらいの100トンを超えるぐらいの力をかけると、ようやく破裂した。
その値は、116トン。
地震が来た時などは、もう少し大きな力が作用して、ひび割れることもあるが、
このように、破裂するように壊れることは、ほぼない。
このように、とても強度があるコンクリートだが、強度以外にも、すごい部分がある。
コンクリートは、固まる前はドロドロの液体なので、型枠に流し込めば、
どんな形でも簡単にデザインできる。