なぜ、道路標識の人は帽子をかぶっているのか?という話がありました。
これについて、街なかで見かける看板などのデザインをしている、
日本サインデザイン協会会長の竹内誠さんが説明していました。
ふだん、我々が生活している道路には、場所を示す「案内標識」や、
注意を示す「警戒標識」、禁止事項を教える「規制標識」など、
たくさんの標識がある。
その中で、「人」がデザインされた標識をよく見ると、みんな帽子をかぶっている。
トイレのマークや非常口の人は、帽子をかぶってないのに、
道路標識の人は帽子をかぶっている。
これは、なぜか?
それは、国際連合道路標識、通称「国連標識」を参考にしたから。
「国連標識」とは、1953年に発行された、ヨーロッパ発の国際的な統一を目指した道路標識。
ヨーロッパは、言葉の違う国々が、たくさん隣り合っている。
そこで、人々がどの国に行っても、標識の意味が分かるようにと、
「形」と「色」と「記号」で表現した道路標識が作られた。
その時に生まれた歩行者専用の標識がこちら。
国連標識(歩行者専用)
よく見ると、日本のものと少し違っている。
日本は、この国連標識を参考に標識を作った。
実は、日本がこの標識を採用したのは、1963年。
翌年、開催される東京オリンピックに向け、新幹線や首都高速道路など、
交通網が整備されると、標識も新たなものを作ることになった。
それまでの日本の標識といえば、図柄ではなく、文字で書かれたものが一般的だった。
しかし、東京オリンピックを開催するにあたり、
日本語が読めない外国の人にも、意味がわかるものがいいと、
国連標識を参考に、現在の標識が誕生した。
つまり、元々の標識のデザインは、ヨーロッパで生まれたので、
この帽子をかぶった人はヨーロッパの人ということになる。
しかし、なぜ帽子をかぶせたのか?
これには、ヨーロッパの印刷文化が関係している。
1700年代、ヨーロッパで印刷技術が発展。
本のページを飾る「飾り模様」や、文章を説明する「挿絵」が登場する。
この時、例えば、ゴルファーを描くなら、ハンチング帽に背広姿など、
特徴を捉えたリアルな絵が好まれた。
このように、ひと目で読者にわからせるために、特徴的なものを強調して、
デザインすることが、重要だった。
こうして描く文化が、標識の帽子につながっていく。
実は、標識が作られた1900年代。
ヨーロッパでは、外出する時にみんな帽子をかぶっていた。
歩行者というのは、外を歩いている人、そして、帽子をかぶっている。
そのため、標識で歩行者を描くならば、帽子をかぶっていないとダメだった。