なぜ缶飲料には、スチール缶とアルミ缶がある?という話がありました。
これについて、食品包装のスペシャリストを育成する飯田有二 先生(東洋食品工業短期大学 学長)が説明していました。
スチール缶はお茶やコーヒー、アルミ缶は炭酸飲料を入れるのに適している。
食品衛生法には、缶飲料の成分によって、異なる殺菌の仕方が書かれている。
お茶やコーヒー、特にミルクや砂糖が多いものは、絶対に高温での加熱殺菌をしなければならない。
一方、炭酸は強い酸性なので、殺菌が必要ない。
そのため、加熱殺菌が必要な飲み物は、冷ました時に潰れないように硬いスチール缶。
炭酸飲料は、加熱殺菌する必要がないので、「冷ます」という工程もなく潰れる心配がないため、やわらかいアルミ缶に入れることができる。
さらに、缶の中で炭酸が発泡して膨らむので、やわらかいアルミ缶でも、潰れにくくなる。
(しかし、缶の硬さの問題なら、すべての飲み物をスチール缶に入れればよいのではないか?)
2022年の時点で、国内で流通している缶飲料の割合は、アルミ缶の方が圧倒的に多い状況。
これは、アルミニウムには、便利な所が色々あるから。
例えば、同じ大きさで比較すると、アルミは鉄(スチール)の約3分の1の重さ。
運ぶのに輸送費が抑えられ、量がたくさん積載でき、
材質がやわらかいので、いろんな加工がしやすいので、コストが低く抑えられる。
さらに、アルミはスチールよりも熱の伝わる速さが約3倍と、冷えやすく温まりやすいのが特徴。
なので、夏場の暑い時期でも自販機に補充後、すぐに冷たい飲み物を購入可能。
一方で、スチール缶は、アルミ缶よりも温度が長く持続。
冬場でも温かさが長もちするので、温かい飲み物はスチール缶に入れることが多い。
このように、コストや強度の違い、熱の伝わり方など、さまざまな用途によって、スチール缶とアルミ缶を使い分けている。
しかし、最近では、アルミ缶にコーヒーが入っていることもある。
これは、液体窒素を一緒に入れているから。
液体窒素は、気化すると、体積が700倍に膨れ上がるので、炭酸の代わりになり、潰れにくくなっている。