「とことん」ってなに?という話がありました。
これについて、日本語の歴史に詳しい、今野真二 先生(清泉女子大学 日本語日本文学科 教授)が説明していました。
「とことんやる」の「とことん」は、「最後の最後・徹底的に」という意味。
これは、足拍子のこと。
足拍子は、日本舞踊の踊り方の1つで、舞台を足で踏み鳴らすこと。
「トン、トン、トン」という音。
3回連続で足を踏む時、「トン、トン、トン」のリズムを言葉では、「ト、コ、トン」と、表現するようになった。
「とことん」っていう言葉は、江戸時代ごろになると、
日本舞踊以外でも使われていた。
当時は、特別な意味を持たない「はやしことば」になっていた。
「はやしことば」とは、歌や踊りの合間に入れることば。
有名なものでは「ソーランソーラン」や、「エッサエッサ」のように、
意味はないが、全体を活気づける役割がある。
江戸時代の後期に書かれた小説「東海道中膝栗毛」には、
旅での宴会のシーンで、
トントントコトン はやしたてて くれっしゃい
(=トコトントコトンと、はやしことばを入れてください)
という記述がある。
この時期には「トコトン」が、はやしことばとして、
庶民の間で使われていたことが分かる。
はやしことばだから、特別な意味はない。
では「とことん」が、今の意味になったのは、いつからなのか?
実は、ある歌が大流行したことがキッカケ。
明治元年に作られた「トコトンヤレ節」。
「トコトンヤレ節」は、日本初の軍歌と言われる歌。
その中で、「トコトンヤレ トンヤレナ」とある。
新政府軍を鼓舞する内容の歌詞やタイトルに、「トコトン」ということばが使われていた。
この歌詞の中で、やはり「トコトン」は、
「ヤレ」の部分も含めて、はやしことばと使われていて、
他の歌詞と比べても、特に意味はない。
なぜ、大流行すると意味が変わるのか?
結局、たくさんの人が曲を聴き、意味を勝手に解釈していく。
ただのはやしことばだった「トコトンヤレ」の「ヤレ」が、
徹底的に「やれ」と伝わり、更に、
歌詞の1〜6番のすべて締めくくりが「トコトンヤレトンヤレナ」とあることから、
「最後の最後まで」という解釈が加わり、現在の意味として、広がっていった。