年齢を書く時に、「歳」と「才」と書くのはなぜ?という話がありました。
これについて、国語辞典の編纂者で日本語の語源に詳しい、飯間浩明さんが説明していました。
「歳」と「才」で、漢字の意味は、どう違うか?
「歳」は、中に「歩」の字が入っている。
1年を表したり、年齢を表したりするようになった。
一方、「才」は、もともとは、生まれつきの資質などを表す漢字だった。
だから、年齢を表す意味は全くなかった。
では、なぜ年齢を表す時に「才」が使われるようになったのか?
昔の人も、画数の多い漢字は「簡単に書きたい」と考えた。
そこで、画数が少なく、漢字の読みも同じ「才」が、遅くとも江戸時代には広く使われていた。
江戸時代、井原西鶴の書物「好色一代男」には、簡単な「才」の字で年齢が書かれている。
この頃は、代用漢字を使うのはごく一般的。
「才」の他にも、「議」を4画で書ける「木」や、「闘」を4画で書ける「斗」などがあった。
しかし、この2つは、現在は使われていないのに、なぜ「才」は使われているのか?
その理由は、日本の学校教育が大きく関係している。
例えば、「学校」「先生」「一年生」などの言葉は、漢字で書くようにしている。
そして、小学校に入ると、年齢を書く機会も多くなる。
その中で、年齢を表す「才」だけを「さい」とひらがなにするのは、いかかがなものかと、
小学生までの仮の漢字として、採用したのではないかと考えられる。
1949年、「当用漢字字体表」というものが出来た。
これは、当時の内閣が、漢字をどのように書くか、字体の標準を示した1850字の漢字表。
これにより、画数の多かった漢字が簡略化され、より簡単に書けるようになった。
この時、「歳(さい)」の漢字が、どう変化したのか?
下の部分が微妙に変わっている。
ただ、画数も変わらない複雑な漢字のままだった。
それを小学校の初めから教えるのは、難しいのではと、
1961年、この年齢を表す漢字として、簡単な方の「才」を小学校3年生で教えることになった。
これが、現在は、小学2年生で教える漢字になっている。
そして、難しい「歳」は、中学生で教える漢字にあてられている。
ちなみに・・・、
大人でも「才」と書く人の方が多い。