なぜ木は長生きなのか?という話がありました。

これについて、木の成長する仕組みについて研究している、
桃井尊央 先生(東京農業大学 地域環境科学部 森林総合科学科 准教授)が説明していました。
例えば、人間の場合、どれだけ長生きしても寿命は100年ちょっと。
一方、木には1,000年を越える樹齢のものが、たくさんある。
この違いは何か?
その理由の1つが、両者の細胞分裂の回数にある。
私たち人間の体を形づくる細胞の多くは、細胞分裂によって自身のコピーを作り出し、常に、新しい細胞と古い細胞が入れ代わっている。

しかし、細胞分裂を繰り返すと、細胞の中にある「人間の設計図」ともいわれるDNAが、傷ついてしまうリスクがある。

そのため、DNAの傷を増やしすぎないように、人間の細胞は、ある程度の回数で細胞分裂をやめ、新しい細胞を生み出さなくなり、老化していく。

一方、植物である木の場合、
この細胞分裂が、人間と比べて、そう簡単には止まらない。
木にも同様に細胞分裂によって、DNAが傷つくリスクがあるが、人間のDNAよりも、はるかに強く守られているため、そう簡単には傷つかない。

これにより、木は人間よりも、はるかに多くの回数、細胞分裂ができる。
つまり、常に若い細胞を生み出し続けることができるため、木は人間に比べ、より長い間、若さを保つことができる。
もう一つ重要なのが、人間の場合、古くなった、つまり死んだ細胞は、尿や便などで、体外に排出されることが多いが、木の場合は、その死んだ細胞こそが、木を長く生かし続ける。
つまり、木は死にながら生きている。
こちらは、スギという木の断面。

真ん中の部分、色が濃くなっている「心材」と呼ばれる所があるが、実は、ここの細胞は、全部死んでいる。
この心材が、高くてい大きな木の体を支えている。
こういう死んだ細胞の活躍が、木では色々と起きている。
木には、心材とその外にある「辺材」、一番外側には「樹皮」がある。
そして、樹皮と辺材の間には、「形成層」という0.1mmほどの薄い層があり、木の細胞分裂は、主に形成層で行われている。
この形成層は、草にはなく、植物の中でも木だけが持っているもので、木の本体とも言える。
形成層で細胞分裂が行われ、新しい細胞が、どんどん形成層の周りに追加されることで、木は大きく成長していく。
つまり、中心に近い細胞ほど古いもの、ということになる。

そして、辺材という比較的新しい細胞で構成されるのが、木の中でも色の薄い部分。
こちらが、辺材を顕微鏡で拡大した画像。

実は、辺材の中で生きている細胞は少なく、色が濃くなってる線の部分だけ。

他は、死んでいる。
辺材の、わずかな生きている細胞は、木の栄養を管理する役割を担っている。
そして、大部分の死んでいる細胞は、植物に欠かせない水分の通り道である管。
人間でいう「血管」の役割をしている。
つまり、死んだ細胞が木全体に水分を運び、長生きするようにしている。
そして、辺材よりさらに内側の古い心材は、
人間でいうところの「骨」の役割を担っている。
ここで実験。心材でできた小さなブロックに、機械を使って圧力をかけてみる。

同じ重さの鉄が、約1tの力で変形してしまうのに対し、
約1.8tの力で、少ししか変形しない。

このように、心材という強固な骨があることで、
木は倒れることなく、大きく高く成長することができる。
これが、木の長生きの秘訣。
一般的には、木全体の90%以上の細胞が死んでいると考えられている。
そして、それらは当然、エネルギーを必要としないので、圧倒的に少ないエネルギーで生活することができる。
死んだ細胞を血管や骨として活用し、エネルギーの節約ができるというのも、木が長生きできる大きな理由の1つ。
他にも、木には、人間でいうところの脳や心臓のような、失ったら困る「急所」というものがない。
そのため、倒れた木から新しい芽が出て復活するという、人間には、とても真似できないことも可能で、長生きできる秘訣にもなっている。

しかし、木にも弱点はある。
木は、長寿である代わりに動けないので、虫や動物に食べられたりしても、逃げる手段が基本的になく、されるがままになる。






