いしわたり淳治さんや、尾崎 世界観 さんら 音楽のプロが「やられた！」と思うほどの歌詞を紹介していました。
No.１ 「愛して欲しい」感情を正反対の言葉で強調
KOH+「最愛」
https://itunes.apple.com/jp/album/%E6%9C%80%E6%84%9B/id291607195?i=291607197&uo=4&at=1000lqjitunes.apple.com
「愛さなくていいから 遠くで見守ってて 強がってるんだよ でも繋がってたいんだよ あなたがまだ好きだから」
いしわたり「普通の人が書くと『離れていてもずっと愛している』という凡庸な歌詞になりがちなものを、『愛さなくていいから』と逆説的に書いたことで言葉と感情に『ねじれ』が生じて、いい違和感となって機能しています。正反対の表現で『愛して欲しい』というメッセージを伝える高度なテクニック。」
No.２ タイトルにもなってる「強欲的なワンフレーズ」がすごい
天才バンド「君が誰かの彼女になりくさっても」
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「誰かの彼女になりくさっても」
いしわたり「全体のほとんどがきれいな言葉で書かれている分、サビの『なりくさっても』という一点に、まるで圧縮されたＺＩＰファイルのように、色んな感情がぎゅっと押し込まれている感じがします。
言葉をあえて汚すだけで、歌詞における、感情をしまう棚としての機能はぐっと上がるという、ひとつの例という感じでしょうか。」
No.３ ストレートでありながら「発明的な歌詞」
奥 華子「恋」
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「好きになってくれる人だけを 好きになれたらいいのに」
いしわたり「このフレーズの状況を数々のアーティストがいろんな言葉を使って描いていたのを、そのまま言っちゃった潔さ。
誰もが漠然と思っていたことを言い当ててくれた感じというか、名前のない感情に名前がついた感じがします。」
No.４ 圧倒的な歌詞量の中に「怒りと優しさが染みる曲」
竹原ピストル「例えばヒロ、お前がそうだったように」
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「ほうっておいたらおもしろいくらいおもしろいことがない 〜 」
尾崎「普通、歌詞は共感できなきゃダメとか、誰にも当てはまる言葉じゃないとダメとか言う風潮を何となく感じているが、この歌は逆で、すごく個人的な事を歌って、その分凄く力強いし、圧倒的。また死んでしまったヒロくんに対して、『今までありがとう』ではなくて、亡くなったことに怒っている。それがすごくいいなって愛情を感じる。」
No.５ 「言葉の持つイメージ」をあえて逆に使う手法
真心ブラザーズ「流れ星」
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「胸が熱くてのたうちまわる 流れ星のように」
尾崎「流れ星は儚いイメージで、消えていくことが良いとされているが、それを消えてしまうことが悲しいと表現する。良い物の象徴と思っていた流れ星の見方を変えた。」
No.６ 聴き手を「心配させる女心」
片平里菜「この涙を知らない」
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「わたしよりもあの子は辛いから ほっとけないんだと言った わたしよりもあの子は弱いから 守ってあげたいんだと言った」
いしわたり「こんな二股男は絶対にやめた方がいいけど、どこか『志村っ！うしろ、うしろ！』的な、ベタ過ぎるダメさ加減が妙に聴き手をひきつける。」
No.７ ＳＮＳ世代ならではの「皮肉表現」
yonige「アボカド」
「私と別れて君はさ 毎日充実してそうだよね そんなにアウトドア派だったのね？ そりゃもうバリバリバリバリバーーーーン」
こういう歌詞はその世代ならではのものです。最新の『あるある』みたいなものは歌詞をアップデートする意味でとても大切です。
No.８ 普通なら興味ない他人の恋愛を「魅力的にする作詞テク」
テイラー・スウィフト「Begin Again」
https://itunes.apple.com/jp/album/begin-again/id571886960?i=571887129&uo=4&at=1000lqjitunes.apple.com
and you throw your head back Laughing like a littke kid （頭をのけぞらせて笑うあなた まるで小さな子供みたいに）
i think it's Strange that you think i'm funny cause he never did （あなたが私のことを面白いと思っているのが不思議 アノヒトはそんなこと思ってなかったから）
いしわたり「彼のキャラクターだけでなく、元彼のキャラクターもさらには私が自分のことをどう思っているかさえも、たった２行で表現している。
ラブソングは基本的には他人の恋バナ。だから聴き手に興味を持ってもらうには、二人の関係やそれぞれのキャラクターが魅力的に見える必要がある。」
No.９ 女性じゃないと書けない「別れの情景」
aiko「恋人」
「それ あたしがあげた服だよ」
尾崎「男なら別れ話の時は未練がましい気持ちだけで終わるのに、女性はこんなことを想うのかという怖さがある。」
No.１０ 救いゼロな歌詞が「逆に救われる曲」
フラワーカンパニーズ「吐きたくなるほど愛されたい」
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「手を少しだけ切って 薄赤い血をなめた 馬鹿々しくて 毛布をかぶった」
尾崎「最初から最後まで同じ熱量でネガティブなことを、全く手を緩めず、とにかく絶望しているというのを伝え続けると、スゴイ救いになりますね。最高に落ちてる人にオススメしたい。」
No.１１ ある口調を使うことで「自分の言葉にした曲」
斉藤和義「ずっと好きだった」
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「ずっと好きだったんだぜ 相変わらず綺麗だな ホント好きだったんだぜ ついに言い出せなかったけど」
いしわたり「同窓会にかぎらず、前に好きだった人にばったり再開することは、誰もがあることだろうと思いますから。」
No.１２ フレーズだけで「行間を読ませる歌詞」
クレイジーケンバンド「タイガー&ドラゴン」
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「俺の話を聞け！５分だけでもいい 貸した金の事など どうでもいいから」
いしわたり「物語に隙間を持たせた粋な言葉使いが、秀逸な歌詞だと思う。歌詞は『何を書くか』が重要だと思われがちですが、実は『何を書かないか』の方が重要です。『いつから知り合いで』『何に金を貸したか』みたいな話は、野暮なわけです。そういうしみったれたことを書かないことで、主人公のクールなキャラクターが色濃く立ち上がってくるわけです。」
No.１３ 限られたフレーズで「画を想像させる歌詞」
乃木坂46「制服のマネキン」
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「君が何かを言いかけて 電車が過ぎる高架線 動く唇 読んでみたけど YesかNoか？ 河川敷の野球場で ボールを打った金属音 黙り込んだ僕らの所(とこ)へ 飛んでくればいい」
いしわたり「みんなが１０人いたら１０人想像できる言葉を使って同じ物語を説明していてそれにはスゴく技術がいる。（寄りであったり引きであったり）カメラワークが優れている。」