ドラえもんの知られざる誕生マル秘物語:ビーバップハイヒール【2017/11/30】

漫画家の むぎわらしんたろう さん。

彼は、ドラえもんの作者 藤子・F・不二雄 氏が独立してから亡くなるまでの最後の8年間を支え続けた最後の愛弟子といわれる人物で、

ドラえもんと野球を組み合わせた「ドラベース」を描いた人気漫画家です。

そして今、コロコロコミック40周年を記念して、

彼が8年間共に過ごした師匠との思い出をリアルに描いたコミック「ドラえもん物語」が反響を呼び、緊急重版されている。

その、むぎわらしんたろう さん が、ドラえもんの誕生ものがたりを紹介していました。

6誌同時連載

あるコミックを見てみると、ドラえもんより少し背の高いのび太が、違うページではドラえもんと同じ背の高さになっている。

これは描き間違いではない。

実はドラえもんは、学年誌で、「よいこ」「幼稚園」「小学一年生」「小学二年生」「小学三年生」「小学四年生」の6誌同時連載という方式がとられていた。
(※後に小学五年生・六年生でも連載)

読者の成長に合わせて、小学一年生では背の低いのび太が、小学六年生では背が高く描かれている。

コミックスは作者の藤子Fが6学年分の中から掲載した傑作選。

そのため同じコミックスの中でものび太の身長がバラバラなのです。

藤子F「これは小学1年生が読むので、わかりやすく、ひらがなで『どしん』と描いてください」

藤子Fは、効果音やセリフ使いも細かく描き分けていた。

小学一・二年生向けには、少しでも読みやすい文字。

高学年向けには、読みやすさよりも雰囲気やイメージの付きやすい文字を使った。

また、低学年向けのストーリーはシンプルでわかりやすいものを。

高学年になると、環境問題、ノストラダムスの大予言など、時代に合わせたテーマに。また、のび太がしずかちゃんの未来を想って、わざと嫌われようとする思春期の恋心を描いた。

これらのドラえもんと共に成長できる繊細なこだわりの数々が、6年間を通じて読者を離すことなく国民的人気を支えてきた。

最初ドラえもんはいなかった

ドラえもん連載開始の1か月前、

実際に掲載された予告にはドラえもんの姿も名前もない。

なんと実はこの時、新連載の予告を描いたけど、内容が決まっていなかった。

しかし、ふとしたことから「起き上がりこぼし」「」「便利な道具」をヒントに、ドラえもんの作品が生まれた。

「起き上がりこぼし」に似た「猫」型ロボットが「秘密道具」を使って男の子を助けるストーリー。

6誌同時連載だったため、第1話は6種類あるが、どれも机の引き出しがキッカケでストーリーが始まっている。

連載とコミックスで内容が違う

藤子F「(ハサミでコマを切り)これでよし!ストーリーを描き足して、もうちょっとおもしろくします」

藤子Fは作品をより良くするために、出版のタイミングでコマを切り加筆修正を重ねていた。

例えば、コミックス第6巻に収録されている「さようなら、ドラえもん」。

どうしても未来に帰らないといけなくなったドラえもんを安心させるため、のび太がジャイアンにたった1人で戦う感動のストーリー。

学年誌で掲載されたものはケンカのシーンが短く、ジャイアンは粘るのび太に対してすぐに降参。ドラえもんに勝利を報告すると、すぐにラストカットへと向かうが、

コミックスに収録されたものは、のび太がジャイアンに必死に抵抗するシーンも長く描かれ、さらにケンカに勝った後のエンディングも、のび太が寝ている間にドラえもんが別れを告げず静かに未来へ帰った描写が加わっている。

この作業は、どんなに締め切りに迫われようとも徹底している 藤子・F・不二雄のこだわりだった。

関連書籍

ドラえもん物語 ~藤子・F・不二雄先生の背中~ (てんとう虫コミックススペシャル)

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