日本列島に生息するアリの中で最大級のものが「クロオオアリ」。
巣の中を見てみると、一番大きな「女王アリ」(約17mm)がいました。
女王アリは産卵に特化したアリ。
ほぼ毎日産卵するため他の仕事は一切しない。
女王の身の回りの世話や、子育てなどは「働きアリ」が担当する。
驚くべきことに、巣の中にいる働きアリは全て「メス」です。
アリの「オス(羽あり)」は、一年のうち交尾を行う時期にしか生まれてこない。
暖かく湿気のある日、同じく羽根を持った若い女王アリと「結婚飛行」する。
結婚飛行とは?
羽根を持った新女王と別の巣のオスアリが巣から飛び立ち交尾する。
女王は、このたった一度の交尾で、大量の精子を体内に保管し、10〜20年卵を産み続ける。(※クロオオアリの場合)
交尾だけのために生まれたオスの寿命は、長くても1週間。
メスの働きアリの寿命は1年くらい。
この働きアリ、分業で外に出て危険な仕事をするのは、老齢なアリ、つまり「おばあちゃんアリ」。
アリは集団を作って生きる、この集団を1つの生き物としてとらえれば、一見冷酷な仕組みも合理的な戦略である、これを生物学で「超個体」という。
生物の生きる目的といえば、自分の遺伝子をより多く残すということが1つにある。
しかし、働きアリは卵を産めないので、次の世代には遺伝子を残せない。
ではなぜ、次の世代も働きアリがでてくるのか?
(ダーウィンの進化論では、「生物はより多くの子どもを残すよう進化し、そうでない性質をもつ個体は数を減らす」としている)
例えば、ヒトでどれくらい次世代に遺伝子が伝わるかを見てみると、
ヒトの場合は通常、父親、母親は、それぞれ、おじいちゃん、おばあちゃんから1セットずつ、23の染色体を受け取っている。
子が生まれるとき、両親から半分ずつ遺伝子を受け取る。
自分と同じ両親から生まれる兄弟・姉妹の遺伝子の組み合わせは4通り。
この時、兄弟・姉妹の中には、自分と完全に遺伝子が一致するもの、遺伝子の半分だけが一致するもの、完全に遺伝子が異なるものがいることになる。
平均血縁度は、兄弟・姉妹で50%、親子で50%となる。
ところが、アリはヒトとは違うメカニズムがある。
アリは性別を決める仕組みがヒトとは違い、「単数倍数性の性の決定」といって、受精卵からメス、未受精卵からオスが生まれる仕組みになっている。
だからオスは半分しか遺伝子を持たない。
父と、母である女王アリから遺伝子を受け取った働きアリがいたとする。
この時、同じ両親から生まれた働きアリには、自分と完全に遺伝子が一致するもの、遺伝子の半分だけが一致するものの2通りがいる。
一方、女王アリと全ての働きアリは、50%の遺伝子が同じ。
よって、平均血縁度は、姉妹で75%、母子で50%となる。
まとめると、アリの場合は、母よりも姉妹の方が自分にとって血縁度が高いということになる。
つまり、自分の子どもを残すよりも、自分の姉妹がたくさんいた方がいいということになる。
働きアリは、女王アリのために行動しているように見えて、自分の遺伝子を多く残すために協力している。