「なぜ鳥は卵を温めるのか?」という話がありました。
この疑問に、日本動物科学研究所 所長の今泉忠明 さんが答えていました。
実は、自分の体が冷えて気持ちいいから。
鳥の卵は温めないと成長できないが、そもそも親鳥はそんなことを知っているわけではない。
しかも、鳥は羽毛に体を覆われているため、そのまま卵を抱えても体温が卵に伝わりにくく、温めることができない。
そこで、鳥は繁殖期になると、胸からおなかの羽毛が自然に抜け落ちる。
そこの抜け落ちた部分を「抱卵斑」と呼んで、いわゆる「ハゲ」みたいになる。
この羽毛が抜けた部分は血管が枝分かれしていて、温かい部分の面積が増えるため、
ここに直接卵が触れると、体温が伝わりやすく、卵の成長が進む。
しかし、親鳥自身は自分の子どもを早く育てるために温めているわけではない。
皮膚(抱卵斑)に冷たい卵が当たると「気持ちいい」と思っている。
ちなみに、卵の片側が温まってくると、卵を転がして新たな冷たい面をおなか側に向けて、また温めることで、卵が均一に成長すると考えられている。
愛情ではなく、体にプログラムされた仕組み。
ほんとうに、親鳥に愛情はないのでしょうか?
Q.ほかの鳥に卵を狙われたときに、必死に親鳥が卵を守ろうと戦うのは、愛では?
A.動物は全部自分のものだと思っている。自分のものを他の者に取られたくない、だから守る。
Q.ペンギンが極寒の地で寒さに耐えて卵を守っているのは、愛では?
A.ペンギンの羽毛は保温性が高く、極寒の地でも寒くないため、抱卵斑に冷たい卵が当たると気持ちいいと感じている。産卵を終えたメスはすぐに海へ食べ物を探しに行ってしまうため、オスが卵を温める。しかし、2週間ほどで戻るはずが、3,4日遅れると、オスは空腹に耐えきれず、卵を捨てて海へ出ることも多い。
Q.ヒナがかえったら親鳥が必死に餌をヒナに与えるのは、愛では?
A.これは色に対する反応。親鳥はヒナの口の中の赤や黄色が見えると脳が反応し、そこへ餌を入れなければならないという反射的な行動に出る。取ってきた餌をヒナの口に入れると、また色に反応し餌を取りに行く。これを繰り返している。つまり餌やりは刺激に対する反応。
人間の物差しで「愛情」とか「母性」とか決めないで、動物目線で探求していく、そういうものを追い続けることが「ロマン」。
鳥が子どもを生み育てるのは「愛ではない」という話でした。