ウイルスと細菌は、似ているようで全然違うという話です。
ウイルスと細菌
細菌は、良い菌には乳酸菌や納豆菌などいいものもある一方で、O-157や腸管出血性大腸菌など悪い菌もある。
例えば、腸内細菌だけで、実は1000種類で、その数100兆個といわれている。
一方、ウイルスといえば、新型コロナウイルス、インフルエンザウイルス、ノロウイルス、風疹、はしか、エボラウイルスなど、危険な悪いウイルスがある一方で、
実は人の進化に必要だったよいウイルスもいると専門家がいっている。
例えば、女性の子宮の胎盤形成に必要な遺伝子の1つがウイルス由来のもので、胎盤の機能を進化させたうえで、重要な役割を果たしている。その遺伝子が入っていなければ、胎盤は正常に作れていないという。
このように、ウイルスの中には、人間に入り込んだことによって、人間を進化させたというものもある。
大きさが違う
ウイルスと細菌は大きさが全然違う。
ウイルスは、単位がナノメートル(100万分の1mm)。
細菌は、マイクロメートル(1000分の1mm)。
例えば、大腸菌は500分の1mmで、
光学顕微鏡、つまり普通の理科室にあるような顕微鏡で見ることができるが、
インフルエンザウイルスのように、直径が1万分の1mmとなると普通の顕微鏡では見ることができない。電子顕微鏡で初めてこれを見ることができる。
ウイルスの多くは、細菌よりも大きさが10分の1から100分の1程度。
比較的大きいインフルエンザウイルスでも、直径約1万分の1mm。
わかりやすく例えると、
人の身長を地球の直径とすると、細菌は5階建てビルくらい。ウイルスはゴールデンレトリーバーの体高くらい。
一般的な不織布マスクには、5マイクロメートルの穴が開いている。
スギ花粉は30マイクロメートルなので、防ぐことができるが、
細菌や新型コロナウイルスは不織布マスクの穴を理論上は通り抜けてしまう。
これでは役に立たないと思われるかもしれないが、
水分の飛沫はマスクに引っ掛かる。
だから感染した人がマスクをしていれば、せきをしたり、くしゃみをしたりしても、外に飛び出しにくいので、感染者が感染を広げないための効果はある。
生き物かどうか
ウイルスと細菌は、生き物なのかどうかの違いがある。
生物の定義がこちら。
・細胞膜で仕切られた細胞からできている。
・代謝(エネルギーを取り込むなど)をおこなう。
・自分で複製できる(細胞分裂)。
細菌は細胞からできている。細胞壁、細胞膜、核様体があり、自分で細胞分裂して増えていく。
一方、ウイルスは自分でそもそも細胞を持っていないし、自分で分裂することができないので、ウイルスは生物ではない。生きた生物の細胞の中に入り込んで、その細胞に取り付いて、その細胞を使って自分のコピーを作らせて外に出ていく。
だから、ウイルスを殺すとかウイルスが死ぬという言い方をするが、伝統的な生物学的な言い方をすると、ウイルスは「死ぬ」ではなく、細胞膜に入っていけない、感染力を失ってしまうという「不活性化」が正確な言い方。
抗生物質がウイルスには効かないとよく聞くが、抗生物質は読んで字のとおり、「生物に抗う」物質、つまり細菌ような生物に抗うというわけで細胞膜や細胞壁を持っている細胞をやっつけることができるが、ウイルスはそれを持たないので効かないというわけ。
変異のしやすさ
ウイルスと細菌は、変異のしやすさも違う。
一般的に、細菌は変異しにくい。ただ抗生物質をいっぱい使っていると、「耐性細菌」という抗生物質が効かない細菌が生まれることはある。
一方、ウイルスは変異しやすい。他の生き物に取り付いて自分のコピーを取るときにコピーミスが起きる。これが変異。
実はウイルスの中にも、変異しやすいものとしにくいものがある。
ウイルスはDNAかRNAかどちらかの遺伝子情報を持っている。
DNAは、二重らせん状になっていて、お互いがチェックするので、コピーミスが起きても修復する機能を持っているので変異しにくい。
だから、天然痘ウイルスはDNAだったので、変異せず絶滅させることに成功した。
一方、コロナウイルスやインフルエンザウイルスは、RNAで一本だけなので、コピーミスが起きた時に修復する機能を持たないので、次々に変異しやすい。