新型コロナウイルスの病名が「COVID-19」になった理由:日本人のおなまえっ!【2020/05/21】

新型コロナウイルスと呼ばれている感染症。

正式名称は、

ウイルス名:「SARS-CoV-2(サーズコロナウイルス2)」。

それによって起きる病気の名前は、

病名:「COVID-19」。

なぜ、記号のような病名にしたのか?

その背景には、これまでに感染症の名前が引き起こした過去の教訓があった。

ヒトに感染するコロナウイルスが、初めて発見されたのは、1965年のこと。

電子顕微鏡で見ると、膜の周囲に突起のようなものが並んでいて、それが王冠、ラテン語でコロナのように見えることからコロナウイルスと名付けられた。

その突起の部分がヒトの細胞の受容体に結合すると、

ウイルスは細胞に侵入し、感染が起こる。

ヒトに感染するコロナウイルスは7種類、そのうち4種類はかぜの原因となるウイルスで症状も軽いものだった。

ところが、2002年、中国・広東省で報告されたコロナウイルス感染症の特徴は、発熱や呼吸困難を引き起こし、肺炎に至らせる重い症状だった。

この感染症は、「重症急性呼吸器症候群」と命名され、その英語の頭文字をとって「SARS(サーズ)」と呼ばれた。

世界32の国と地域に広がり、感染者8000人以上の感染者と、死者800人近い死者を出した。

感染が最初に起こった中国系社会から海外各地で活動する華僑の人々を通して世界各地に広がった。

それから10年後の2012年、再びコロナウイルスによる新たな感染症が発生。

症状、病名ともにSARSに似ている「MERS(マーズ)」。

世界27か国で症例が報告され、感染者2500人近い感染者のうち、死者はおよそ850人。35%という高い致死率が特徴だった。

感染が多発した韓国で、WHOが疫学調査を行った結果、病気をもたらしたのは中東を訪問した帰国者だったことが分かった。

中東のサウジアラビアで多数の感染者が出たため、「中東呼吸器症候群(MERS)」と命名。

似た発音の「SARS(サーズ)」と「MERS(マーズ)」。

しかし、その病名には大きな違いが。

SARSは、症状そのものを示すが、MERSには、地域名が入っている。

地域名により、中東への差別や経済的影響につながるのではないかと、懸念の声が上がった。

病名が引き起こしたあつれきは、過去にも存在した。

2009年、アメリカやメキシコから広がった新型インフルエンザ(H1N1インフルエンザ)。

通称「豚インフルエンザ」。

当時、エジプト政府は、その名前を理由に感染予防措置を行った。

国内で飼育する豚の全頭殺処分を強行した。

その背景には、宗教対立もあった。

豚を不浄なものと見なすイスラム教と、その飼育を行うキリスト教徒。くすぶっていた対立が病名をきっかけに再燃した。

このような、過去の感染症の名前から得られた教訓を生かすため、

2015年5月、WHOは感染症の名前に関する声明を発表。

インフルエンザやMERSを振り返り、新しく感染症に名前を付ける際には、「地域名」「人名」「動物名」などを病名に付けるべきではない。

とした。