2020年7月以降、イスラエルのネタニヤフ政権による パレスチナ自治区ヨルダン川西岸にある入植地の一部併合 が法制化される可能性が出てきた。
なぜ、併合が問題なのか?
それは、1947年のパレスチナ分割決議で、2国間共存の約束が国連で定められ、度重なる協議が続けてこられたから。
将来のパレスチナ国家となる土地がイスラエルに併合されれば、国連の決議が守られないことになってしまう。
にもかかわらず、イスラエルによるヨルダン川西岸地区への入植は進んでいて、国際法に違反しながらも、そこに移り住むイスラエル人の数は増え続けている。
一部の占領が既成事実と化しているこの西岸自治区の併合が実際に法制化されてしまえば、パレスチナ国家自立の礎が崩壊しかねない。
この入植地の問題を「ドーナツ」に例えてみると、
AくんとBさんがどうやって分けようかと話し合いを始めた。
ところが話し合いの最中に、Aくんが食べ始めてしまう。
これが入植地と言える。
周りからダメだと言われても、食べてしまったものは返せないと、さらにAくんはつまみ続けながら、残りの分け方を議論しよう!というような状態になっている。
そして、この食べてしまった部分について、正式にAくんが自ら、自分の物と法律で決めてしまう。
そういうことになりそうだ。
こうした動きにパレスチナ側も警告している。
「イスラエルは和平など望んでいない、これをキッカケにパレスチナの土地を全て占領するつもりだ。約束どおり平和的に西岸から出ていってくれなければ、力で追い出すしかない。」
では、なぜ今併合なのか?
今年(2020年)1月、トランプ大統領が「世紀のディール」と銘打った中東和平案が大きく関わっている。
この和平案はイスラエルにかなり肩入れした内容で、西岸のほとんどの入植地についてイスラエルの主権を認めた。
その他の70%の土地についても、パレスチナ国家の樹立を認めると言いながら多くの制限が課されている。
アメリカのバックアップを期待できる今だからこそ、ネタニヤフ首相にはこの問題のかたをつけたいという狙いがあるとみられる。
ただ、西岸の土地全てがイスラエルのものと信じている右派のイスラエル市民もいる。
こうした人たちにとってみれば、西岸の一部を併合すれば、トランプ大統領の和平案にある通り、パレスチナ国家の樹立を容認しなくてはならないのではないかと警戒する動きもある。
ネタニヤフ首相にとって、自らの支持層でもある右派からの反発化がくる、こういった所にもこの問題の複雑さを感じる。
ネタニヤフ首相のこの決定が強行されるのか、世界が注目している。