新型コロナウイルスの感染防止対策の1つ「追跡アプリ」。
フランスでは、特に普及が進んでいないという。
パリ市では(2020年8月)10日、セーヌ川沿いなど人が集まる場所を指定して、屋外の「マスクの着用」が義務化された。
新型コロナウイルスの感染者数が20万人を越えていて、最近では、1日の感染者数が2千人を超える日もある。
さまざまな感染対策がとられる中で、今回取り上げるのが、フランス政府が開発したウイルス感染追跡アプリ「StopCovid」。しかし、これまで完全に期待を裏切っている。
2020年6月2日に配信された当初は、190万件のダウンロードがあったが、3週間後にはアプリを削除したケースが46万件にも上った。
政府の発表では、接触したという情報としてスマホに通知された件数はわずか14件。ほとんど役に立っていないという状況。
これには、個人情報を集められるという不安があるという。
フランス国民によると、
・政府が管理すると言っている以外の個人情報も吸い上げられるかもしれない。
・個人情報流出に気をつけているけど、アプリを使った場合どうなるか分からない。
などの声がある。
このアプリは、日本の追跡アプリと機能はほぼ同じだが、大きく違う点が1つある。
追跡アプリには、人と人が接触したという情報を保管する場所ある、これが大きく分けて2つタイプがある。
日本などで採用されているのが、「分散型」といわれるもので、接触したという情報はどこかに集められるものではなく、それぞれの個人のスマホの中にとどまる。
一方、フランス政府が開発したアプリは「集中型」といわれるもので、政府が設けたサーバーに、接触したという情報が一元的に集められて管理される。
接触情報は匿名化されているが、国に情報が吸い上げられるという拒否感が非常に強く「集中型」のアプリは不評。
このアプリの人気のなさは致命的な欠陥を生んでいる。
アプリに詳しい専門家、フラン・アンベールヴィエールさん によると、
現時点でフランスのアプリは追跡機能を全く果たせておらず、効果を得るには国民の6割がアプリを利用しないといけない。
とのこと。
当初、集中型を検討していたヨーロッパ各国では、国民の反発を受ける形で、ドイツなどの多くの国では、グーグルやアップルが共同で基本設計した「分散型」アプリを採用している。分散型を導入するEUの加盟国で進むアプリ同士での情報の交換にもフランスは加わることができていない。
陸続きで移動の自由が保証されているヨーロッパで、フランスのアプリのマイナス面が際立ってきている。民間企業よりも政府が感染情報を管理すべきだと主張するフランス政府が、方針を変えない限り、アプリの普及は見通せない状況となっている。