緊急車両のサイレンについて、話がありました。
パトカーといえば、「ウー」。
消防車といえば、「ウー、カンカン」。
救急車といえば、「ピーポー」。
それぞれ、なぜこの音なのか?
京都にある サイレン製造会社の社長 上岡 幹宜(みきのり) さんが説明していました。
ピーポーと鳴る救急車のサイレンを開発したのが上岡さんの父、先代社長の淑男(ひでお)さん。
実は、昭和40年ごろの緊急車両、パトカー・消防車・救急車は、全部同じ「ウー」というサイレンだった。
当時の消防団は、地元の会社員、自営業の方などで結成され、正式な消防官とは違って、ふだんは別の仕事をしていたのだが、
消防車の「ウー」というサイレンの音を聞くと、仕事中であっても、火事の現場に駆け付けていた。
しかし、その際、実はパトカー・救急車だったという事例も多く、消防団員をイライラさせていた。
さらに、救急車のサイレンについては、搬送される患者には、ストレスを与え、住民からも緊張感があり過ぎると、消防庁にクレームが寄せられていた。
そこで、消防庁は上岡淑男さんに、救急車のサイレンを改良するように依頼したという。
そこには、条件が2つあった。
1つは、ストレスを与えない。
もう1つは、緊急だと分かる。
というもの。
2つが真逆の無理難題を依頼され、開発に行き詰まった淑男さんは、海外のサイレンを参考にするためヨーロッパへ。
そして、フランスで視察をして聞いたのが、「ピーポー、ピーポー」という緊急車両のサイレン。
それは、日本のように、音が1つだけではなく、2つの音を組み合わせた音だった。
緊急車両のサイレンを採用するには、道路交通法の観点から警察の判断も必要だったが、
その警察から、「このサイレンでは緊急車両にふさわしくない」と横ヤリが入った。
もっと緊迫感を連想させる音を作り出さなくてはならなくなった。
そこで、目を付けたのが、音を震わせる技法「ビブラート」。
ホイッスルなどでも使われている。
音を震わせると、どのような効果があるのか?
ビブラートの「ある」「なし」で、サイレンを聞き比べて見ると、
ビブラートありの震えている方が、注意を引くように聞こえる。
ストレスを与えない楽しげな音階の「シ」と「ソ」の連続音に、ビブラートを加え緊張感を生む音を開発した。
昭和45年から全国に配備され、開発者の淑男さんには、神戸の消防署から感謝状が贈られた。
一方、消防車には、「カンカン」という「半鐘の音」をつけるだけで、消防車の音は決まった。