3色の国旗が多いのはなぜ?という話がありました。
これを、苅安 望 さん(日本旗章学協会 会長) が、説明していました。
「国旗に3色のものが多い理由は、オランダのまねをしたから」。
オランダの国旗は、赤・白・青の横縞の3色国旗。
世界で最初の3色国旗は、このオランダ国旗だと言われている。
この3色国旗が誕生し、真似されるようになったのは、「ある出来事」が深く関わっている。
16世紀にオランダがスペインに対して起こした「独立戦争」。
当時、オランダを占領していたのは、無敵艦隊を擁する大国スペイン。
オランダは、大きな港町を中心に商業が盛んだったが、その利益をスペインに独占されていた。
この状況を打破するために立ち上がったのが、オラニエ公ウィレム。
後に「オランダ建国の父」と呼ばれた人物。
1581年、まだスペインの支配下ではあったが、ウィレムはスペインに対して、オランダの独立を宣言。
その時、オランダの人々をまとめ上げるため、あることをする。
ウィレムの家紋から3つの色を取って、オランダの3色国旗が生まれた。
当時はこの3色国旗が画期的だった。
それまでの他の国々の国旗を見てみると、複雑な紋章が描かれたデザインばかり。
これらは、全て王家のものであり、限られた者しか使うことが許されない旗だった。
しかし、ウィレムは、シンプルな3本線の国旗を作り、オランダ人が誰でも自由に使える旗にした。
その結果、民衆の団結力は高まり、オランダ人の独立への気持ちは、一つになっていった。
このオランダの3色国旗が、世界で初めての民衆のための国旗というふうに考えられている。
独立宣言から3年後、ウィレムはスペインの陰謀により暗殺されてしまうが、ウィレムが残したこの3色旗のもと、民衆たちは戦い続け、40年にわたるスペインとの戦争に勝利。1609年にオランダは独立を果たした。
その後、大航海時代を迎え、もともと大きな港を持っていたオランダの経済は急成長。
「オランダの奇跡」と呼ばれるほど、豊かな国となる。
こうして、オランダの3色の国旗は、独立と繁栄のシンボルとなった。
しかし、ここで海洋国家ならではのアクシデントが・・・。
船に掲げた国旗が、潮風にさらされ、強い日ざしを浴び続けると、オレンジがあせてしまう。
そのため、1630年、オレンジ色が現在の濃い赤色に変更された。
この赤には「勇気」、白には「信仰」、青には「忠誠心」という意味が込められている。
そして、海洋大国であり、先進国となったオランダにあやかって、国旗をまねしたのが、ロシアとフランス。
ロシアの初代皇帝、ピョートル1世は、20歳の頃、王様という身分を隠して、オランダに行き、造船所で船大工として働きながら、最新の造船技術を学んだ。
1705年、オランダのような豊かな国になるように願いを込めて、オランダ国旗の色の順番を変えた3色の新しい国旗に変更した。
そして、オスマン帝国に支配されていた国々を独立へと導くと、その国々は、ロシアに倣って3色の国旗を作った。
一方、オランダにあやかったもう一つの国 フランスは、フランス革命中の1794年、
ブルボン朝のよる王政から共和制に変わった際に、国旗を「自由・平等・友愛」を表す縦縞の3色国旗に変更。
更に、フランスによって、オーストリア帝国から開放されたイタリアも、国旗をフランス国旗の青の部分を緑に変えた現在の3色旗に変更。
こうして、オランダから始まった3色国旗は、独立と解放のシンボルとして、さまざまな国へと影響を与え、世界に3色の国旗が増えていった。
現在、世界には197か国の独立国あり、3色の国旗を55か国が使用している。