脂肪の話です。
体にとってあまり良い印象のなく、無駄なイメージがある「脂肪」。
実は、私たちの体にとって、重要な役割をもっている。
一体、どういう役割をしているのか?
栄養をたくわえる
脂肪組織は、脂肪細胞から構成される。
脂肪細胞が、食べ物から吸収された脂分(中性脂肪)を体の中に貯める働きをしている。
元々、脂肪は体を動かす時のエネルギー源としても使われるので、ないと困る。
衝撃を緩和
衝突した際のクッションの役割を持っている。
もうひとつ、外が寒いと体の表面から熱が奪われる、そのため、ダウンジャケットの中綿のような役割をしている。
物理的な力や、温度の変化による断熱効果など、緩和して中のものを守っている。
内臓の位置を安定させる
内臓の周りに脂肪がつく、「内臓脂肪」がある。
お腹の中には、「腹腔(ふくくう)」という空間があり、そこに色んな内臓が入っている。
すると、その内臓と内臓の間に隙間ができる。
その隙間を埋めるための梱包材のようなものとして脂肪が使われている。
それによって、内臓の位置を安定化させている。
熱をつくる
「白色脂肪細胞(左)」と「褐色脂肪細胞(右)」というのがある。
脂肪を蓄えるのが「白色脂肪細胞」。
それに対して、「褐色脂肪細胞」には、細かな脂肪の粒しかなくて、その代わりに、ミトコンドリアのように、脂肪や栄養を分解して、エネルギーを生み出す装置がたくさん入っている。
「褐色脂肪細胞」は、脂肪を貯蔵するというよりも、脂肪を燃焼して熱を生み出す細胞。
これが体温の源になっている。
満腹感を得る
脂肪が分泌する物質として「レプチン」がある。
これは、メタボ研究でも注目されている物質。
レプチンがホルモンとして血液中に出ている。
ホルモンというのは、細胞から他の細胞や臓器に向かって、「ああしてください」「こうしてください」というメッセージを込めた物質のこと。
ホルモンを別の細胞が受け取って、作用することになる。
それらが、脂肪から分泌されているということが大きな意味を持っている。
通常ごはんを食べたりすると、レプチンが脳の部分の深い所、視床下部の満腹中枢にレプチン受容体があるが、
満腹中枢に、レプチンがくっつくことによって、満腹感を得て食欲を抑える。
結果的に、食べ過ぎを防いで体型を維持する。
しかし、太りすぎたりして、レプチンが多量に分泌され続けると、効きが悪くなり食欲を抑えにくくなる。
体の中で脂肪がつきにくい場所はどこ?
精子の形成は、精巣で行われている。
精巣を包んでいる袋の部分、陰嚢(いんのう)。
私たちの体は、36℃〜37℃くらいの温度をもっている。
精子が作られる適切な温度は、32℃くらいだといわれている。
だから5℃くらい下げておく必要がある。
そこで、精子を取り巻いている皮膚の袋である陰嚢は、保温の中綿(脂肪)が入っていたら温度が逃げていかなくなる。
そのため、そこには脂肪がつかないという設計になっている。
他には、「耳」にも脂肪がつきにくい。
動物的に考えると、耳は放熱を促すような所。
ウサギやゾウが、わかりやすい。