なぜ子どものころは嫌だった注射が大人になると平気になるのか? という話がありました。
これについて、山口創 先生(桜美林大学 教授) が説明していました。
大人と子どもでは、痛みの感じ方が違う。
同じ痛みでも、子どもの方が約10倍痛いと感じている。
そもそも、皮膚の表面には、痛みを感じる痛点が、1平方センチあたり100以上ある。
痛点が刺激されると、その信号が脊髄を通って脳に伝わり、「痛い」と感じる。
子どもは、脊髄の入り口の神経が十分に発達していない。
大人は脊髄の入り口の神経がしっかり分かれているので、痛みも分けて伝えることができる。
一方、子どもは、この部分がまだ十分に分かれていないため、多くの神経が刺激されてしまう。
そのため、同じ刺激でも、子どもの方が痛みを強く感じてしまう。
子どもの成長と痛みの感じ方を調べた研究では、男女共に7歳から9歳にかけて痛みの感じ方が約10分の1になっていることが分かる。
この年頃に、脊髄の入り口の神経が分類・整理されてくると、考えられている。
また、子どもの痛みには、心理的な部分も関係している。
不安や恐怖によって、痛みがさらに大きくなっている。
注射などの痛みが恐怖や不安の記憶として残ると、痛みを感知するセンサーや脊髄、脳の働きが変化して、
今までは痛くなかった弱い刺激でも、痛いと感じるようになってしまう。
子どもが注射嫌いにならないためにはどうしたらよいか?
できるだけ痛みを感じさせないこと。
注射の痛みを和らげる3つの方法がある。
意識をそらす
皮膚からやって来た痛みの神経が脊髄に入る入口の所に「ゲート」つまり門のような役割をしているシステムがある。気をそらしていると、ゲートが閉まる役割になって、痛みが感じにくくなる。
例えば、大好きなおもちゃや本などに夢中になっている間に注射を打つと痛みを感じにくいという。
皮膚をさする
さすってあげると、脊髄の入り口のゲートが閉じる。更にスキンシップの作用でオキシトシンというホルモンが脳が出てくる。痛みを小さくする作用があるので、痛みの感じ方も小さくなる。
「痛いの痛いの飛んでいけ〜」は、単なるおまじないではなく、科学的な効果もあった。
甘いものを食べる
甘いものを脳で感じると、オピオイドという物質が出る。この物質は、脳内麻薬と呼ばれていて、非常に痛みを軽くする効果がある。
これら3つの方法は、大人にも効果がある。