ぶどうの種の話です。
種ありブドウと種なしブドウは、どっちが美味しいのか?という話がありました。
双方の出荷量を比べてみると、種ありの方は年々減っていることがわかる。
しかし、同じ産地の同じ品種のブドウで、食べ比べてみると、種なしは味が薄く、種ありの方が甘いという話が出た。
実際に、糖度を測ってみると、
種なし:糖度18.5
種あり:糖度21.2
種ありの方が甘いということがわかる。
しかし、種なしに比べて、3割安で売られている。
ここで、ユニークな実験をした。
種ありと、種なしの房を持って、同時に少し振ってみる。
すると、種なしは、粒が全部落ち、種ありは全く落ちなかった。
なぜ、このような違いが出たのか?
種ありの中を見てみると、軸のところと、「果芯」と呼ばれる管でつながっている。
そのため、手で振っても離れにくい。
種には、この果芯を通じて、実に糖分などの栄養を引っ張り込む力がある。
一方、種なしの場合は、種がない状態で実をふくらませるので、栄養を引っ張る力が少し弱くなる。
実は、ブドウが実を甘くなるように進化したのは、種を食べてほしいから。
サルなどの動物からすると、好きなものや、栄養価の高いものから食べる。
逆にブドウからすると、種ができてから食べてほしい。
種を離れた所へ運んでもらえば、生存範囲が広がる。
この生存戦略が種ありブドウの美味しさの秘密だった。
ところが、この種ありブドウを作る人が激減。
今や、幻のブドウになりつつある。
その理由は、種は勝手にできるものではないから。
いったいどういうことか?
種ありブドウだけを作っている農家を見てみると、
いくつかのブドウを房ごと切り落としていた。
これは、作る時に欠かせない「摘房」という作業。
実は、種ありブドウには、房の中に種のない粒が入り込んでしまうことがある。
その粒は大きく育ちにくいため、あらかじめ落とす。
その量は年や天候によっても違うが、3割から4割は種が入っていないという。
全ての粒に種を入れるためには、熟練の技術が必要。
そのため、収穫量も種なしに比べて安定しない。
なのに、値段は3割安。
作り手が減るのも仕方がない。
それでも、種ありブドウを作り続ける一番の理由は味で、おいしいものを食べてもらいたいという気持ちがあるからだという。