携帯電話が「090」から始まることが多いのはなぜ?という話がありました。
これについて、説明してくれたのは、
日本に存在する全ての電話番号を管理する 総務省 番号企画室 の 鈴木厚志 室長。
現在、携帯電話の最初の番号は「080」や「070」もあるが、「090」から始まる番号に耳なじみがある。
この「090」という数字になったのは、「争いが起こらない平和な番号」だったから。
もともとの携帯電話は10桁の番号だった。
それが11桁になる時、争いが起こりそうになった。
携帯電話のサービスは、1979年、車に取り付ける「自動車電話」から始まった。
当時、自動車電話は、一般企業や組織の幹部などが乗る車に多く設置された。
その時、使われたのが、「030」から始まる番号で、この時は、全部で10万通りの番号があった。
なぜ、030なのか?
当時、「010」「020」を別のサービスで使っていたため、それに続く番号を割り当てた。
そして、1985年、自由に持ち運べるショルダー型自動車電話(ショルダーホン)が登場。
ショルダーホンは、使用料金が非常に高かったが、自動車の外に出て自由に持ち運べる便利さに注目が集まった。
ショルダーホンによって利用者数が増えたため、「040」始まりの番号が追加され、携帯番号は倍に増えた。
携帯できるようになった電話は、どんどん小型化し、1987年には、片手で持てる携帯電話が登場。
更に、ポケットサイズにまで進化し、便利なアイテムとして爆発的に普及し始めた。
そして、時代が平成へと移った1989年には、たくさんの人が携帯を利用することになり、当然、番号は足りなくなった。
1996年9月、始まりは「010」「030」「080」の3種類とし、地域指定番号をなくして、1台1台に割り振られる範囲を拡大した。
これで、番号は3000万通りと大幅に増やされた。
しかし、これでも数年後には番号が枯渇し、いずれ限界がくると考えられていた。
そこで、携帯電話の番号を10桁から11桁に増やし、最大9000万通りに増やすことが決まった。
11桁に変更される番号は、既に携帯電話を利用している人でも、混乱なく移行できるよう、
例えば、「030」からの番号を持っていた場合は、「3」を4桁目に移動させ、新たに決まる「0a0」を頭につけるという方式が考えられていた。
この時、「a」に入る番号を「9」と決め、携帯電話の始まりは「090」に統一された。
なぜ、090だったのか?
この時、「1・3・5・6・8」は、既に携帯電話とPHSで使用されていた。
10桁の段階で、これらは使用されており、更に11桁に移行するまでの間に「2・4」も使う予定。
11桁になる前には、「070」と「090」しか空いていなかった。
更に、「070」は、5・6に続く番号で、分かりやすいからと、新しいPHSの番号とし、残る「090」が携帯電話の番号に決まった。
では、なぜ、今まで使っていた「010」や「080」では、ダメだったのか?
10桁時代の番号を使わなかった最大の理由が、「不公平だ」と感じる人が出てきてしまう可能性があることだった。
例えば、「010」に決めた場合、他の番号を持っていた人は、「『010』だけそのままなんてズルい」という気持ちになるのではと考えた。
一体、どういうことか?
例えば、11桁の最初の番号を10桁時代に使われていた「010」に統一した場合、もともと「010」だった人は、4桁目に「1」を追加するだけで済むが、
もともと「010」以外の番号だった人は、頭の番号と4桁目の両方が変更になってしまう。
これは、「030」を採用しても、「080」を採用しても同じで、「変更になる部分が少ない番号の人はズルい」という不公平な状態になっていまう。
そこで、10桁時代に使ってる人が 一番少なかった番号「090」を採用するのが、最も公平だと考えた。
他にも、10桁時代の番号へのかけ間違いを防ぐ目的もあった。
こうして、平成11年1月1日午前2時、日本の携帯電話は、「090」から始まる11桁となった。
とくに、大きな混乱やトラブルもなくスムーズな移行だった。
その後、1人1台が当たり前になってくると、番号は再び足りなくなり、2002年「080」を追加。
2013年には、PHSに割り当てていた「070」を使えるようになり、
2021年3月末時点で、携帯電話の番号は、約1億9440万と、人口に対する普及率は、155%となっている。