なぜ「コロコロ」より「ゴロゴロ」の方が大きく感じるのか?
これについて、音の持つ意味について研究している 川原繁人 先生(慶應義塾大学 言語文化研究所 准教授)が説明していました。
大抵の場合、
コロコロの場合、軽い・小さい 石を思い浮かべる。
ゴロゴロの場合、硬い・重い・大きい 石を思い浮かべる。
辞書を引いてみると、
大きさに関しての記述はない。
しかし、ゴロゴロの方が大きく感じる気がする。
この2つの言葉の違いは、濁点が付いているかどうか。
この濁点が、「大きさ」「重さ」「強さ」のイメージと結びついている。
例えば、「キラキラ」「ギラギラ」など。
これらも、濁点が付くことによって、「大きさ」「重さ」「強さ」が増しているように感じる。
例えば、強そうなイメージの「ゴリラ」や「ドラゴン」が、濁点をなくして「コリラ」や「トラコン」と名前が変わってしまうと、小さく弱くなったように感じる。
反対に、かわいらしい「コアラ」が「ゴアラ」になったら、硬くていかつそうに思える。
では、なぜ濁点が大きいなどのイメージと結びつくのか?
それは、濁点がない発音よりも、濁点がある発音の方が、口の中がふくらんでいるから。
濁点のありなしで、口の中の空間の大きさを比較した実験によると、
濁点がある「ジ」の方が、「シ」よりも口の中の空間が大きくなっている。
自分で声を出してもふくらみが大きくなっているようには感じないが、実際にはこれほどの差がある。
そして、口の中が広がって大きくなることで、低い音の成分が含まれた音が出てくる。
つまり、「コ」よりも濁点が付いた「ゴ」の方が低い音といえる。
実際に、「コロコロ」と「ゴロゴロ」を比べてみた周波数のグラフがこちら。
「コ」と「ゴ」の部分だけ比較してみると、「ゴ」の方だけ低い周波数が見られる。
そして、「低い音」というのは、大きなものから出るという特徴がある。
例えば、サイズが違う鈴の場合、一番大きい鈴から一番低い音が出た。
太鼓や鐘なども同じ。
このように、ものがおおきくなるとより低い音が出る。
そこから、私たちは低い音を聞くと、無意識的に大きなものを連想してしまう。
だから、より低音成分が含まれるため、コロコロよりゴロゴロの方が大きく感じる。
さらに、この濁点に限らず、音は様々なイメージを持っている。
ここに2つの図形がある。
どちらの図形に「タケテ」と「モルナ」の名前をつける?
おそらく、ほとんどの人が左の図形に「タケテ」、右の図形に「モルナ」とつけると思われる。
実は、濁点が付けられる音は、角ばっていたり、近寄りがたいというイメージがある。
一方、濁点が付けられない音は、丸っこい、親しみやすいというイメージがある。
そのため、多くの人がタケテはとがったイメージ、モルナは丸みを帯びたイメージを連想する。
他にも、サ行は、「サーっと風が吹く」「スーッとする」のように、「速さ」や「爽快感」を表し、
マ行は、「もふもふ」「むちむち」のように、「やわらかさ」や「弾力性」。
ナ行は、「ねばねば」「ぬるぬる」のように、「粘着性」をイメージさせるなど、それぞれの音にもイメージがある。