どちらを先に書いたのか?:2355【2022/04/15】

ここに、書道で使う道具がある。

薄くした墨汁と、半紙。

そこに、カタカナの「ナ」の字を書く。

もちろん、正しい書き順で。

横を先に書いて、後から縦を書く。

しかし、書いたものを見てみると、

交差している部分は、横の線の方が上にきているように見える。

本来の書き順なら、縦の方が上に書かれているはず。

先に書いたはずなのに、上にくる。

一体、何が起こっているのか?

実は、この薄墨と紙がポイント。

墨が紙につく所が見えやすいように、下から光をあててよく観察してみる。

一画目を書いた後、よく見ていると、書かれた線の周りに、水がじわじわとにじんでいくのがわかる。

そして、この水が染みた部分には、もうそれ以上、水分が浸透できないため、さらに上から書いても、

そこには、墨が定着できない。

この水が染みた部分が、線として残るため、先に書いた方が上に見えるということが起きていた。

【補足】

江戸時代の画家、伊藤若冲は、この現象を作品に取り入れ、その手法は「筋目描き(すじめがき)」と呼ばれている。